ネタ切れするまで続く
木曜日は木の話
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2007年6月

その192  よい住宅−環境U          6月28日
 
先週お話したように、確かに日本の森林はこのままではいけないのだと思います。が、なぜ今のような状態になったのか、何が足りなくてどこをどうすればいいのかが良く見えてこない気がします。山の下刈りや間伐をすればいいのか、木造住宅に県産材を使えばいいのか、それとももっと別の問題があるのか、問題が大きいのか複雑なのかもよく分からない気がします。
住宅でも県産材を使用した場合の利子補給制度があって、地域産材の利用を推奨しています。単に住宅に県産材を使えばいいのであれば何も大げさにすることもなく、木材をあつかう業者(製材屋さんなど)が県産材を仕入れて出荷すればいいわけです。が、単純にそうならないから、今盛んに森林環境の整備をしようとしているのでしょう。
建物を建てる時に使う木は、どうやって決められていくのでしょうか。
打合せをする時には、施主→設計者→施工者→木材業者と言う流れになるとします。誰も県産材を使いたくないとか、輸入材を使いたいとかの希望はしていないはずです。その中で、見た目の希望や強度や納期・数量などの条件で気付かないうちに無理がかかってきていて、結果的に県外産材や外国産材を使うことになってきていたのでしょう。
希望・要望をかなえる際にできるかできないかの選択は2つに1つですが、できるという選択の中には簡単にできるのか相当無理しないとできないのか、色々な巾があるはずです。
たとえば梁間や開口を大きくとりたいといった場合に、中に柱を一本入れれば杉でできるものが、それをしないと強度の関係で米松になったりします。中に柱を入れることがどれだけ支障になるのかを考えて、使うことができないほどの支障でないのであれば、柱を入れることが選択肢の一つになります。そうすると構造的にもバランスの良い、しかも県産材を使うことができる建物になるわけです。
これに限らず似たようなことは他にもあるはずなので、できるかできないの判断の際に、どこにどのぐらいの無理がかかるとできるのかというのも考えていかないといけないのかな、と思っています。ちょっと話し方がややこしかったですか。



その191  よい住宅−環境          6月21日
 
今年から「やまがた緑環境税」なるものが現れました。森林環境の改善につなげていくためのもののようです。
今まであった所得税や住民税の定率減税はなくなって、そのうちに消費税が上がるなんて話もあるのに、それに加えて新しい税金を集める前にやることがあるんじゃないの?などと言う話になると道がそれてしまうので、とりあえずそれは置いといて・・・。
環境問題で出てくるのが二酸化炭素=CO2の排出量の削減です。木は二酸化炭素を吸収して大きくなりますから、木が成長すると二酸化炭素が固定化されたことになります。その量は山の木材蓄積量に比例します。
山には広葉樹(ブナ・ナラなど)を中心とした天然林と、針葉樹(杉など)を中心とした人工林があります。天然林の木材蓄積量はずーッと横ばいです。戦後植林された人工林では、約3倍に増えています。今まで40〜50年かけて山は一生懸命環境のために働いていたわけです。
でも「木材蓄積量が3倍に増えて良かったねぇ。」と喜んでいられる状況にあるわけではなくて、現在の人工林は飽和状態になっています。この木を使って新たに木を植えてまた二酸化炭素を吸ってくれるようにしないと、山ははだんだん荒れてくるのです。できれば広葉樹も家具やフローリングなどに使って、また二酸化炭素を吸ってくれるようにすればいい訳です。
木は光合成でCO2のC=炭素を体内に取り込んで、O=酸素を大気中に放出します。木の中に取り込まれた炭素はその木が腐れるか燃えるかして、形がなくなるまでそのまま固定されています。ですから木を伐って家や家具などに使って形を残しておけば、固定された炭素をそのままにして新しく二酸化炭素を吸ってくれる山を作ることができる訳です。
では、なぜ県内の山の木が使われなくなってきたのでしょうか。私もつかみきれていませんが、来週また続きの話をしたいと思います。



その190  構造的に安全な建物          6月14日
 
建物を建てる場合は規模によって程度の差があったりしますが、必ず構造(強度)上の安全を確かめます。木造2階建500u以下程度の建物(通常4号確認の建物と言います。)の場合は、耐力壁(筋違)の計算をします。ただし確認申請の際には、それすらも審査の対象にはなっていませんでした。また、構造上の安全は耐力壁だけで決まるわけではありません。地耐力に合わせた基礎の構造や、床・屋根などの水平面の剛性なども大きく関わってきます。
早坂さんも書いていましたが、この6月20日から建築確認申請で特に構造に関する部分が大きく変わります。構造計算の基準や方法が変わるのではなくて、確認申請や検査時にチェックする項目と言うか方法が変わってきます。今までは「建物は適正に建てられていくものだ」という前提で審査していたものが、「間違いやごまかしがあるものだ」という前提でチェックするとでも言いましょうか。
前述のように、今まで確認申請でチェックされていた構造的な項目と言うのは全体の数分の一程度で、その他の部分は設計者や施工者が判断していくことになります。構造的に安全な建物は人の良心に任せておいては出来ないと言われたようで、私としてはかなりショックです。
ではどういう風に変わるのか、4号確認の場合で言うと今までは添付する図面が「平面図、配置図、案内図」程度でした。6月20日からはそれに加えて「立面図、断面図、基礎伏図、床伏図、小屋伏図、構造詳細図、地盤面算出表」などが必要になります。そのことによって構造上でのチェックを厳しくしていくという方針のようです。
それと、まだ細かい対応が決まっていない部分があってはっきりしないのですが、現場での構造に関係する変更は認められない、という事になっています。確認申請を出すときには詳細の設計が完了しているというところまで来ていないと、後で確認申請の取り直しという事になったりします。
今までに比べて、確認申請の準備も何倍か時間がかかることになりそうです。

その190 追加
 
確認申請について、今日になって新たな情報が入りました。
4号確認の添付図面については、平成20年12月20日までは現行どおりでいいという事らしいです。ただしチェックされていくのは同じですし、途中で変更出来ないことなどは変わりません。
対応がはっきり固まるまでしばらくは手探り状態になりそうです。



その189  よい建物          6月7日
 
建物を建てるのには大きなお金が必要です。良いものをできるだけ安く建てたいと、誰もが願うことです。安くと言うのは数字ではっきり出てきますから、比較検討・判断しやすいところです。では、良い建物と言うのはどんなものなのでしょうか。
先ずは施主側からみると、考える機能が満足できること、これがなければ意味がありません。そして、意匠的に建て主の希望をかなえている事、これも重要な要素でしょう。建築基準法でいうと、衛生上・避難上安全であること、そして構造上安全であることがあげられます。
機能や意匠とは、簡単に言えば間取りや外観・内装に関することです。これに関してはどの建て主も興味があります。内容も理解しようと努めてくれます。
衛生上というのは、窓からの採光や換気・24時間換気設備などが上げられます。避難上というと、住宅でも最近義務付けられた火災警報器などがあげられます。こちらは、場合によっては理解していただくのに少々手間を要する場合があったりします。
たとえば、車庫の面積が50uを超えると他の部分(住宅や物置など)と防火区画をしないといけません。ある程度のお金もかかってきます。建て主は安く仕上げたい、大工さんは予算がなければできない、でも法律上はしないといけない・・・、さてどうしましょう。これと似たようなことが、少なからずあります。
結局は施主に理解を求めて基準にあうようにしてもらわないといけないのですが、「東京の真ん中であめし、こんだ田舎でそんだごどしねさげって、検査合格しねなんてごどねぇもんだ。」とか、「他でもこうやって建ったな、えっぺある。」といったような話になったりします。
人に迷惑を与えるものでもないしあっても役に立たないと思えるようなこと、建て主にとっては必要とは思えない事にお金をかけるのは理解できない、と言ったところなのでしょう。その気持ちもわかるのですが、中にはどうしても曲げることができないものがあります。
法律は個々の条件の違いや詳細な事情にまで細やかに対応しているものではなくて、一定の基準に均して線を引いているといったところで、納得がいかない部分が出てくることは建築に限ったことではないでしょう。乱暴な言い方をすると、事故を起こさなければ飲酒運転をしてもいいのか、という話と同じことのように思います。
設計者や施工者の責任はもちろんありますが、社会的に見て良い建物を建てるには建て主の理解も大きな要素になってきます。