ネタ切れするまで続く
木曜日は木の話
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2006年12月

その171  改めて構造計算書偽装事件V          12月28日
 
今年も残すところ今日を含めて4日になりました。今年は一年を通じてずっと忙しく、お世話になったお客様や工事関係の方々にも感謝するばかりです。
住宅を建てるというのは、ほとんどの人にとって一生で一番大きな買い物です。そのお手伝いをさせていただくわけですから、万が一にも建物完成後にお客様がつまらない思いをしてはいけないと、どうやったら満足したいただけるか考え悩んだりしながら、一生懸命に仕事をしているところですです。
しかしながら、建物のことをわかりやすく説明して理解してもらうことは、なかなか容易でないことも事実です。特に構造のこととなるとこれがまた理解しにくいし、家を建てるにあたって他にも間取りのことやら資金繰りのことやら考えることがいっぱいあるのに、「構造のことを詳細に説明しても話がややこしくなるだけかな?」と感じて、軽めに説明して終えてしまっている場合が往々にしてあります。
しかし、やはりこれではいけないのだなと、特に最近強く感じています。
人間は弱いもので、人が見ていないとつい誘惑に負けてしまいがちです。それは、先週の話に出てきた大工さんだけではなく大なり小なり誰もが持っている部分です。でも、その誘惑を跳ね返すだけの力を私たちは身につけていかないといけないのです。そして、私たちがその建物に携わる建築士としての責任(設計監理をする責任、それを施主に説明する責任)を自覚しなおすことが必要でしょう。
それと合わせて、建主となるお客様にもそれなりの意識を持っていただかないと、対応できないところもでてくるのだろうと思います。
私が参加している大工塾では、1月からまた構造実験を行ないます。耐力壁や柱・土台・桁の仕口などの強度実験です。単に法令や告示での決め事どおりに設計して、現場でそのとおりに施工されているか監理していくというだけだはなく、実験ではなぜそういう形で決められているのか、そうしないとどうなるのかがわかってきます。そうすると、そうできない場合はどういう方法をとったらいいのかという応用も利くようになります。その応用の中には、基準に照らし合わせると外れるものがあったりするわけですが、データをそろえればそれが新しい基準として認められていくかもしれません。
私が事務所を開いてから丸14年がたちます。高校を卒業して仕事を始めてから27年です。正直言って学校での勉強は好きではありませんでした。なので高校も普通高ではなく実業高(鶴岡工業建築科)にしたとも言えます。
でも、いまこうして仕事をしながら必要なことを学んでいくことの楽しさというか充実感というのは、決して「仕事はお客様のため」などというものの考え方からは出てこないような気がします。
いまの自分の仕事はこれでいいのか、いいとすればなぜいいのか、自分の仕事に自信ではなく確信を持てるようになりたい、そんな事を考える歳の瀬です。



その170  改めて構造計算書偽装事件U          12月21日
 
先週お話した建築士法や建築基準法の改正と一緒に問題になっているのが、建築確認申請時のチェックのあり方です。詳細の構造計算を提出するものでも、今までは数値の入口と結果の出口のチェック程度だったものが、もっと詳細な審査をするようになっています。来年6月からは小規模木造建物(2階建て500u以下)でも、今まで審査の特例があったものがなくなって、構造関係の審査や検査が行なわれるようになるようです。
これらの審査や検査は普通に仕事をしていれば必要ないものであると私は考えますが、厳しいチェックや検査をしないと規律を守ることができないという判断をされたわけで、それだけ建築士を含めて建築業界の信頼を失ったということだと思います。大いに反省しなければなりません。
今年の春頃にこんなことがありました。初めてお会いした大工さんですが、紹介があって申請の図面を私が書きました。基礎や耐力壁、仕口の仕様のことなどを打合せしている時に「そんだ事しねまねなだがや、検査あんなだが。予算ていうものあるなださげ、さいねっていう事もあるなだもんだ。」???、耳を疑うような信じられない言葉が出てきました。
冗談半分ではなく真顔で、自分の仕事を否定されたと言わんばかりの激しい口調で私をにらみつけてくるのです。終いには私の話の途中で、怒って捨て台詞を放って事務所を出て行きました。検査がなければ必要なことさえしなくてもいいという考え、なんと恐ろしいこと。○ュー○ー・○村建設・○歯とまるっきり同じです。
いまだ冷めやらぬ構造計算書偽装問題に関連しての報道がなされている最中のことです。そうでなくても通る話ではないのですが・・・。その後なんとか説得して必要な事はしてもらいましたが、こんな人がいるかぎり検査や審査を厳しくするしか方法がないんだろうと思ってしまいました。残念なことです。
今までこの人はどんな仕事をしてきたのでしょう。もちろんこんな人とは今後付き合うことはないですが、この人がこれからも同じ考えで仕事をしていくのかと思うと、これもまた恐ろしくさえあります。



その169  改めて構造計算書偽装事件          12月14日
 
世の中を揺るがした構造計算書偽装事件の発覚から1年が過ぎました。同じ仕事に携わるものとして、恥ずかしい限りです。
一時期すべての建築士の試験をやり直して、新しい建築士制度をつくるという話がでました。でも、それでは問題の解決にならないだろうと思います。この問題は建築士の知識や技術的な問題ではないですよね。職業倫理というか、人間性というか、建築の仕事とは別のところに大きな原因があって、それが普通では考えられないあってはならない事件を引き起こしています。
結局試験のやり直しは多くの反対意見の中で撤回されました。その代わりと言うのか、講習の受講などが義務付けられることになったようです。
今、建築基準法や建築士法の改正が進められています。設計事務所を管理する管理建築士になるには、資格を取ってから一定の実務経験を必要としたり、設計事務所に勤務する建築士も講習を受けなければならなくなったりします。
また、一級建築士の中でより専門の立場にある構造設計一級建築士や設備設計一級建築士を定めるようになります。他にもありますが、機会があったらまたお話します。
今年の建築士の試験の合格率が、今までの半分ぐらいになっています。一級建築士の製図の試験の発表が間もなくですが、たぶんこれも合格率が下がるのでしょう。それもどうなのかと思いますが、世間に対して示しが付かないといったところなのでしょうか。それほど建築士の信頼を失っているわけですから、仕方ないことなのだろうと思います。



その168  アスベストU          12月7日
 
先週に続いてアスベストの話をしたいと思います。
このアスベストがいったいどのくらいの建物に使われているのかはっきりはわかりませんが、使われている建材のリストを見てみると、木造住宅でもかなり使われている可能性があると思われます。先週の話で通常使われている状態では健康に被害がでるようなことにはならないようだと言いましたが、それでもこのままでいいと言うわけではありません。
公共の建物などでは除去作業も行なわれています。また、自治体によってはアスベストの調査費や除去作業にかかった費用に対して、補助や低利の融資をするなどの対応しているところもあるようです。とは言ってもお金がかかることに変わりはないので、特に民間や個人の場合はそう簡単に物事が進みそうにはありません。
でも、リフォームの際には必然的にそれを解体するわけですから、その時にアスベストが飛散する可能性もあるわけです。全解体であれば解体業者さんがちゃんと対応してくれるはずですが、一部のリフォームの場合は大工さんがバリバリと壊す、なんて事もあるかもしれません。その時はやはり注意しないといけないわけです。飛散しないように丁寧にあつかうとか、水で湿らせるのも有効なようです。
アスベストはその9割近くが建築材料に使われているようですが、それ以外にも使われています。そちらはまだ全面使用禁止になっていないとか、どうしてなのでしょう。
参考までにですが、アスベスト(石綿)と似ているものにロックウール(岩綿)があります。この岩綿は健康被害に対して影響はないとされています。石綿が天然の素材であるのに対して岩綿は人口の素材です。天然素材が有害で人口素材は害がないと言うのも、なんとなく変な気がしますね。アスベストのほうは太さが非常に細いので、空気中に浮遊しやすいなんてこともあるのかもしれません。