ネタ切れするまで続く
木曜日は木の話
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2006年2月


その130  軒下          2月23日
 
話の始めから余談ですが、事務所の軒下の雪が消えて土が出てきました。そのまわりにはまだいっぱい残っていますが、建物の熱で消えていったんでしょう。北側も消えましたが、南側のほうがいっぱい土が出ています。
廻りは草むらで徐々に消えていくときに出てくる地面には、ネズミが通った跡がありました。南側の軒下には富有柿の苗とミズナラの実生がおいてあります。吹雪の時には雪の中に隠れて寒さをしのいでいたと思っていたのですが、その中でもしやネズミにやられてしまったのではと心配になっていました。
早く全部融けてくれないかと見守っていたのですが、ようやく土が出て柿もミズナラも出てきました。見てみると、んッ、ダイジョブでした。根元が1cmぐらいになった柿は皮をかじられた後も無く、元気そうでした。まだ根元で3mmほどしかないミズナラの実生は、枝の先に硬い新芽をしっかりとつけていました。
囲いもせずに屋根の雪も落ちっぱなしでした。屋根から落ちて凍った硬い雪の中でよく耐えていたもんだと、ちょっと感激でした。
今年はこの苗を山に持っていって植えようと思っています。そう言えば去年の春に山に挿し木したサワラの木、根付いて秋にも元気にしていましたが、この雪でどうなったことやら。早く行って確かめたくなってきました。
もう一つそう言うえば、去年エノキダケの菌を植えた原木を山においてきています。結果が出るのは秋ですが、今から楽しみです。
と、余談が長くなってしまいました。今日は確認申請の話の続きをする予定でしたが、来週に持ち越します。
 


その129  確認申請          確認申請
 
構造計算書偽造問題についで今度は東横インの違法改造問題が発覚し、建築業界にとっては不名誉な事件が続きます。この違法改造はどうして起こったのでしょうか。
建物を新築する時は構造や規模に関わらず確認申請を提出して審査を受けます。工事が始まれば図面の通りにできているか確認しながら現場を進めます。途中で変更しなければならない場合は変更確認申請を提出します。そして完成すると完了検査の申請をして完了検査を受け、検査済証をもらいます。
この検査済証をもらうまでは私たち建築士が設計監理の形で携わっていて、良識のある仕事をしていれば問題は無いわけです。しかし、工事完了後はどうかと言うと誰の目も届かなくなります。それをいいことに申請しないで小規模な増改築をしてしまえば、誰かが気付いて訴えたりしない限りその建物はあたり前のように存在しているわけです。
増築工事の場合は10u以下の工事は確認申請を提出する必要はありませんが、それだからと言って基準法や条例に違反した建物になってよいわけではありません。それと、今年9u増築してまた来年9u増築、どっちも10u以下だから申請なし?という事にもなりません。トータルで10uです。
基準や規定をつくれば、それを破ったり抜け道をつくろうとする人がいる、人間の弱さかずるさか他人に厳しく自分に甘い、ちょっと悲しい現状ですね。みんなが良識ある範囲で生活していれば、規則はそんなに厳しくしなくても世の中は成り立っていくはずなんですけどね。



その128  2月9日          木造の構造:仕様規定U
 
先週お話したように、仕様規定だけを守っていても必ずしも構造上安全だとは限りません。
柱は数字である程度の寸法を出していますが、梁に関しては「中央付近の下側に耐力上支障のあるような欠込みをしてはいけない」という抽象的な記述があるだけで、寸法などの規定はありません。そうすると、よくある条件の梁であれば今までの経験上でこの寸法(梁のせい)でというような決め方でもまず間違いは無いでしょう。でも、大きな力が複雑にかかる梁では、同じ長さでも同じ梁の寸法ではもたないかもしれませんよね。ではその場合どうしましょうか。
間取りと柱の配置、梁の架け方を見ると力がかかってくる部分が分かります。その場合は部分的に構造計算をします。
どんなことをするかというと、構造計算は上のほうからやっていきます。まずは屋根の荷重から小屋組みの部材や梁の計算からです。小屋梁には小屋束、2階の床梁には床や柱が乗っかります。そのときにたわみが大きすぎないか、折れたりつぶれたりしないかという計算です。
次にはその梁が乗っかる柱、その断面が梁からかかってくる荷重でつぶれないか、はらんで座屈したりしないかという計算です。
そして柱が乗っかる土台です。土台は横に使いますし、柱は縦に使います。柱が土台に乗っかる面(木口面)はそれが当たる土台の腹の面よりも硬いので、柱が土台にめり込まないかをチェックします。柱自体は荷重に耐えられても、土台に対してのめり込みに耐えられない場合が少なくありません。その時どうするかと言えば、柱と土台の接触面を大きくするために大きいサイズの柱にするか、めり込みに耐えられる硬い材料の土台を使うということになるわけです。
構造のことに限らず、断熱や気密のこと、耐久性のことなどは建築基準法でも細かく規定されているわけではありません。ということは確認申請が通ったからといって、安全で長持ちする自分の心に描いている建物が建つというわけではないということです。そのためには工事の仕様書や図面でのチェック、現場の監理が重要になってくるのはもちろんです。それに加えてそこに住む人が建物のことを理解して、その建物にあった住まい方をするということも大切なことです。



その127  木造の構造:仕様規定          2月2日
 
建物にとって、外部からの力に耐えその本体を支える構造は基本の中の基本です。木造の住宅で2階建て500uまでの規模の場合、その構造のチェックは建築基準法や告示の仕様規定によって行われます。
たとえば柱の太さでみてみます。柱の断面の小径は横架材間の垂直距離(たとえば土台と桁の内々の高さ)に対して、屋根の重さや壁の重さ・階数によって1/22〜1/33までの数値が規定されています。3000mm(約10尺)の柱に120mm(約4寸)の土台と桁が付くと、3000−120−120でその垂直距離は2760mmになります。瓦屋根で2階建ての1階の柱の場合の小径は1/28ですから、2760×1/28≒99で、最低10cmほどの径が必要だという具合です。
また、3階建ての1階部分の構造上主要な柱は135mm以上というように規定されています。
では、その数値を守れば絶対安全なのかということになるわけです。1階の柱には大きな2階の床梁が乗っかってくる場合もあるし、屋根を支える2階の柱がそのまま乗ってくる場合もあります。かと思えば、その力がかかってくる隣の柱には大きな梁も2階の柱も乗っからない、なぁんてこともあるわけです。
その様々な数値を極限まで標準化して、横架材間の1/28という柱の小径の仕様規定が出来ているわけです。ですから余裕で間に合うものもあれば、ギリギリ間に合うものもあります。そして、中にはその規定どおりになっていても構造計算をすると間に合わない、なぁんて場合もあるわけです。
「えッ、そんなのあり?」って思いますよね。そう、ありなんです。車でも制限速度の40キロを守っていれば事故が起きないかといえば、そんなことはありません。そのうえで安全に注意した運転が必要になるわけです。
なので構造的に無理がかかりそうなところは、その部分だけでも詳細の構造計算をして、部材寸法や取付方法を決めていかないといけないわけですね。