ネタ切れするまで続く
木曜日は木の話
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2006年1月


その126  木造住宅の確認申請          1月26日
 
建物を建てるときは確認申請書を提出して、その確認済証が降りてきてから工事にかかります。あなたが住んでいる木造2階建の住宅も、確認申請を受けています。(ごく一部には確認申請の必要のない地域もありますが・・。)
この辺では今まで確認申請は鶴岡市役所や庄内総合支庁の建築課で審査をしていました。去年の4月に“且R形県建築サポートセンター”の庄内事務所が三川にできて、最近はそこに提出する物件が多いようです。このサポートセンターというのは、例の構造計算書偽装問題ででてきた、確認審査機関のイーホームズと同類のものです。
確認申請で何をするかと言えば、その建物が建築基準法や消防法に照らし合わせて問題がないかどうかのチェックを受けるわけです。その図面は私たち建築士が書くわけで、もちろん法規をチェックしていますので普通は問題なく降りてきます。解釈に違いがあったり、軽度の間違いがあったとしても訂正で済むので、確認申請がおりてこないなどということはまずありません。また、おりてこない様な申請書類を作るようでは、私たちとしても余程の大きなミスです。
木造2階建の専用住宅(500u以下)では、どのような法規チェックが必要かというと、主なものをあげると
 
 1.敷地の状況、用途地域など
 2.敷地面積、建築面積、床面積 → 建ぺい率、容積率 
 3.建物の高さ
 4.外壁の防火、火気使用室の内装制限
 5.居室の採光や換気
 6.構造:耐力壁や仕口の仕様
 
等々といった具合です。1から4までは自分のところだけではなく、隣の家の環境や安全にもつながってくる部分です。
たとえば、ガスコンロを使う台所の壁や天井に木を張れないというのは、4の火気使用室の内装制限です。一種低層住居専用地域では、容積率が目いっぱいで増築が出来ない等といった事もあります。
「このぐらいチェックしていれば安全だろう。」と、思いますよね。が、基準法では普通はこれで充分という線を出しているのではなく、最低これだけは守るようにという基準を示しているに過ぎません。
たとえば、わかり易く6の構造を例にとると、というような話を来週にお話したいと思います。



 
その125  木造建物の倒壊U          1月19日
 
先週に続いて、地震の場合の木造建物の倒壊についての話です。
地震で建物全体を揺らされたとします。そこに同じ構造面に4の力に耐えられるAという壁と、8の力に耐えられるBという壁があったとします。たとえば10の力がかかったとすると、それをAが3負担してBが7負担して一緒に耐えてくれればA+Bで10の力で、2の力が余裕があってOKになります。
しかしこの場合、弱い部分A(変形が大きい部分)が力を負担する前に、隣にある強い部分B(変形が小さい部分)が力を負担してくれます。そうすると強いBに10の力がかかっていってしまいます。そうすると8の力にしか耐えられないBの壁が壊れて、その後は4の力にしか耐えられないAの壁も壊れるということになります。
つまり地震の揺れのような力の場合、同じ構造面でいうと全体に均等に力がかかったものが、一部の強いところに集中して作用するという形になるわけです。なので、単純に考えると弱いAの壁から壊れそうですが、逆に強いはずのBから壊れていきます。
建物の出隅には多くの場合壁があって、そこに力が集中しやすいのでホールダウン金物を使うように規定されていたりするわけです。
木造の耐力壁の計算では、必要な壁量を計算してそれをバランスよく配置することになっています。その中で、ギリギリの壁量とギリギリのバランスで計算されていれば、大きな外力がかかったときに強いはずのB地点により大きな力がかかって、倒壊してしまうという可能性もあるわけです。
では、それを解消するにはどうすればよいかというと特効薬はありません。あくまでも適正な耐力壁の選定とバランスの良い耐力壁の配置、それと建物の構造の一体化です。特に構造的にバランスが良くない建物は、通常の基準で規定されているものをギリギリでもクリアすればよいという考えでなく、それ以上の考慮をしないといけないと言うことになるわけです。



その124  木造建物の倒壊          1月12日
 
遅くなりましたが、あけましておめでどうございます。今年もよろしくお願いします。
それにしてもすごい雪ですね。家でも屋根の雪下ろしをしました。その雪が1階の屋根につきそうなくらいです。父でさえ、1月の始めでこの雪は記憶にないと言うほどです。
テレビでは雪下ろしの事故とともに木造住宅の倒壊が報じられています。このところ地震の話題が多かった上に今度は雪の被害ですから、悲しいことですね。
そんな中で、地震の揺れによる倒壊と雪の重みによる倒壊との違いについて考えてみました。
コンクリートの破壊は、“割れる、砕ける”です。鉄骨の破壊は“折れて潰れる(座屈)”です。では、木材はどんな破壊の仕方をするかというと、“折れる(ポキッと)、潰れる(めり込み)、折れて潰れる、裂ける(割裂)、”といった状態です。この破壊のし方はそれぞれの材料の特徴がでていますね。木材は縦・横・斜め、それぞれに性質が違うので、色々な壊れ方をします。
雪の重みでの倒壊と地震による倒壊では、かなりの違いがあります。
まず、屋根に雪が乗っかります。その重みは母屋・小屋束を通して小屋梁に伝わります。その梁から柱、土台、基礎へと伝わって、地面に伝わります。この場合は上からかかる荷重=垂直荷重です。荷重はその材料の性質に関係なく、規則どおりに伝わっていきます。
そしてその重みを支えられなくなる部分、たとえば梁などの部材の弱い部分が折れたり、仕口などでかかった力より弱いところが壊れるわけです。柱まで耐えても土台が耐えられずに、柱が土台にめり込むといった事もあります。
この場合は大きな力がかかった部分、または構造的に弱い部分が壊れていくわけです。
これを防止するには、スパンの長い梁は荷重に合わせて太くする、その梁を受ける柱は太くする、梁から柱に力がちゃんと伝わる取り付け方をする、という事になります。要するに、その部分にかかった力をそれぞれの部分で受け持つといった感じです。
では、地震の場合はどうかというような話を次回にしたいと思います。