ネタ切れするまで続く
木曜日は木の話
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2005年12月

その123  水抜き          12月29日
 
12月だというのに雪は多いし、ずいぶん寒い日が続いています。しかも風が強くて地吹雪状態、こんな夜は水抜きをしないと水道が凍ってしまいます。
事務所は特に夜誰もいないので、冷えっぱなしです。この間の風の強い日の朝、ちゃんと水抜きをしていたので水道は凍っていなかったのですが、ガスの瞬間湯沸かし器の中が少し凍っていて、もう少し冷えていたらお湯が使えなかったかもしれません。瞬間湯沸かし器も中まで水を抜くことができるんですが、面倒なので今まで抜いたことがありません。なので正月休みも事務所に来て水を通してみます。
水抜きをしたときは蛇口を開けます。そうすると配管の中の水が排出されて、水道の凍結を防ぎます。トイレでも水抜きをしたときにはタンクの水をはらいますよね。これはタンクを空にするのが目的ではなくて、タンクまでの給水管の中の水を抜くためです。
ついでなので便器の話をして見ます。洋式便器には水の流し方によって色んなタイプがあります。
最近多いのはサイホンゼット式でしょうか。汚物を便器から排出する際にサイホン作用を利用するタイプで、便器の中の水の面積が広めで、汚れが付きにくく音も比較的静かです。それの下のランクには、サイホン式・セミサイホン式・洗い落とし式と、だんだん便器の中の水の面積が小さくなっていきます。
その上には、サイホンボルテックス式というのがあります。もっとも高級なタイプで、水の面積も広くて音はとっても静かです。住宅につけたことは2.3度あったでしょうか。
毎日使うトイレです。こんなところに凝ってみるのもいいかもしれませんね。

ではみなさん、良いお年を



その122  悪質リフォーム業者          12月22日
 
先日、知り合いの紹介があって市内のYさん宅に伺ってきました。行く前に聞いた話は、「シロアリが出たみたいなので見て欲しい」とのことでした。この時期にシロアリの話はあまり聞かないなぁと思いながらも、床下にもぐる準備をしてとにかく伺ってみました。
シロアリは、玄関の入口の建具の枠と巾木ににかなりの食害があって、今年の6月に見たお宅とまったく同じ状態でした。一応業者さんに頼んで駆除しているとのことで、崩れた枠材を広げてみてもシロアリは見えませんでした。万が一その枠材から中の柱や土台に入っていると悪いので、「念のためにボロボロになった枠材をはずして取り替えて、そのときに中の柱や土台を確認しましょう。」という話をしながら、茶の間に案内されてからYさんが話し始めた内容が、なんとびっくり!!
袋から出して見せてくれた数枚の写真、床下と小屋裏の意味の無い補強?工事、それに加えて床下の通気ファン。テレビなどでもよく出てくる悪質リフォームであることは一目瞭然、そのシロアリの業者さんが言葉巧みに、湿気だとか木材にひびが入って弱いだとか言って工事を勧めていったとのことです。まさか鶴岡でもそんなことがあるなんて、ちょっと信じられないような気持ちもありながら台所にある床下収納庫をはずしてもぐってみました。
束や大引きに金具がいっぱいあちこちに取り付けてあって、無意味に鋼製床束を建てているものだから玄関近くのほうに進めない状態でした。仕方ないのでYさんに了解を得てその無意味に取り付けられた床束をはずし玄関近くまで這っていったところ、シロアリの入った枠材の近くの土台は健全なままでした。それはよかったのですが、このあきれるような床下の状態、テレビ以外では始めてみました。この工事は去年おこなったとのことでした。
誤解があると悪いので言っておきますが、それは東京の業者で聞いたこともない名前でした。庄内に事業所のあるよく聞く名前の会社ではないのでご安心ください。
築13年というその家は、床下にもぐって見てみても痛んでいるところはまったく無く、木材や下地の合板もまだ新しいといえるほどきれいでした。少し土を掘ってみましたが、梅雨時でもないので分からないのかもしれませんが湿っぽいところもありませんでした。それなのにその業者は補強と通気用のファンをあんなに、それと床下に敷き詰めた軽石のようなもの、これは効果なあるのか無いのか???
この家を5年前に中古住宅として買ったそのお宅では建築に関係する知人等がいないらしく、息子さんは東京で働いていて普段はいない、そんな不安な状態でそのリフォーム業者の言うことを信じてしまったようでした。
その話を聞くと、私たちももっと皆さんの相談相手になれるようにアピールしていかないといけないなぁと、つくづく感じてきました。



その121  地震と木造の構造基準          12月15日
 
木造については(他の構造もそうですが)、先週お話したように建築基準法や告示などである程度の構造の基準が定められています。建築基準法が施行されたのは1950年(昭和25年)ですが、その後大きな地震や台風などの被害が出ると、何度か基準の見直しがされています。
1978年に起きた宮城沖地震、私が高校のときで建築科にいたわけなのでその被害についても話題になって少し記憶があります。そのときは、ブロック塀が倒れたり、ピロティ形式の建物が倒壊したりしました。これを受けて1981年に法令の改正が行われて、それを「新耐震」と呼んでいます。鉄骨(S)造や鉄筋コンクリート(RC)造は、それ以降の建物であれば現在の基準に照らし合わせても、ほぼ大丈夫と言うことができると思います。
木造に関して言うと、まだ記憶に新しい1995年、兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)があり、S造・RC造の建物の倒壊もありましたが、軸組木造の建物の倒壊が特に大きく報じられました。そのことを受けて2000年に法令が改正されて、木造において耐力壁をバランスよく配置することや仕口の仕様などが定められました。と言うことは、今の基準になってまだ5年しかたっていないということですね。
だからと言って、それ以前に建てた木造住宅がすべて危険だと言うことにはならないので、ご安心を。でも、木造においても耐震診断や耐震改修が取り上げられている昨今、もし疑問な点があれば遠慮なくご相談ください。



その120  木造住宅の構造的なばらつき          12月8日
 
一週間あいてしまいましたが、先々週の木造の構造的なばらつきの話の続きです。
木造の構造強度をチェックする方法は、大きく分けて2つあります。
1.許容応力度や限界耐力による詳細な構造計算:3階または500uを超える場合は、この構造計算によらなければなりません。
2.壁量計算や継ぎ手・仕口の仕様、柱の小径などを、基準法や告示の仕様規定に従って算定する方法:2階建てまでで500u以下の木造建物の場合は、ほとんどこれによっています。
通常行われている2の方法は、ある程度建物の諸条件を標準化して、便宜的に計算しているものです。ですから、すべての建物の構造の安全を確保できるものではなく、その建物の間取りや立体形状によっては、標準化された条件と著しくかけ離れてしまう場合があるわけです。たとえば、正面を全面開放した車庫や、吹抜けが多かったり続き間が多い間取りなどは、その条件から外れている可能性が考えられます。このことが、先週お話した構造的な品質のばらつきにつながるわけです。
では、その場合どうすればよいかと言うと、ひとつは1の構造計算による方法があります。これは、屋根・梁・柱・床・土台・基礎など、計算でそれぞれの部材を出していきます。
もう一つは2の方法で、建物の形状に合わせて柔軟に対応していく方法です。建物を複数のブロックに分けて計算したり、現状にそぐわない部分を割増し・割引きして、できるだけ現状に合わせたり、一部に許容応力度計算を取り入れたりする方法です。実際に、大きな空間が必要な作業場や車が3〜4台はいる位の車庫などでは、梁や柱の計算をする例が少なくありません。
しかし、このことは法令の上で「・・・しなければならない。」となっている訳ではないので、その判断を誰がどこでするかということになります。
大きな空間の真ん中に柱が一本、あるよりはないほうが開放的でよさそうだ、と言うことでその柱を抜いて欲しいと言うことがよくあります。が、それによって構造的には何倍も不利な形を作ってしまうことになりかねません。そのことを、私たちも説明していかないといけないし、少し面倒な話かもしれませんが丈夫な建物のためだと思って、施主側からも理解していただく必要があることだと思います。



その119  構造計算書偽造問題          12月1日
 
あまりにも大きな問題なので、今日はいま盛んに報道されている構造計算書の偽造問題について、私の考えることをお話します。
最初にニュースに姉歯氏(あえて建築士とは呼ばない)が出てきてインタビューされているのを見たときは、「???」どういうことなのかさっぱり分かりませんでした。通常は建物を設計する場合、意匠設計と構造設計は(場合によっては電気設備設計・機械設備設計も)一緒に受けます。そして、元請の設計事務所から構造計算をする設計事務所に構造計算を依頼します(資格は同じ一級建築士です)。私は多くの場合、鉄骨造と鉄筋コンクリート造は他の事務所に計算を依頼して、木造は自分で計算をします。特に住宅などの木造は柱や壁の配置が単純ではなく、計算の結果によって柱や壁の位置、梁のかけ方などを考えながら構造設計していくので、自分で計算したほうがよりよい対応が出来るということもあります。
はじめに思ったのは、構造計算や構造図などの書類には構造計算をした事務所の名前も出ますが、なぜ報道の真っ先に構造計算をした事務所が、悪びれた様子も無く他人事のようにインタビューに答えているのかな、ということでした。
その後、徐々に状況がつかめてきたときは、「ごまかすつもりでやったことは、通常の審査では判らないだろうな」とおもいました。しかし、その偽造の内容をテレビでみて「これは普通では絶対ありえない。」と感じました。それは、あまりにも極端で一目見てもおかしいと気付くほどの内容だったからです。工事金額に大きく影響するほど鉄筋の量をごまかすとなれば、誰か一人の胸のうちでごまかしたとは到底考えられません。
 
偽造することによって得をするのは誰かと言う見方をすると、
 1.設計側では仕事が簡単になるわけでもなく、安く上がるわけでもなく、普通は得をしない。ただし、偽造することを条件に仕事を請けることができるとすれば、得をすることになる。
 2.施工者側では、工事金額が安く出来る。
 3.施主側では、工事金額が安く出来る。
ということになります。
 
偽造することを誰が指示したかという見方では、
 1.設計者側では、上の理由から自分だけの意思で偽造することは考えられない。
 2.施工者側では、施主から工事を請け負う際に設計施工のような形で受けて、設計を自分の立場でできる(依頼先を決めることができる)場合は、施主に黙って手抜きをすることもできる。
 3.施主側では、工事費を安く上げるために基準を下回った構造になっても良いと考えれば、設計者・施工者にそれを指示、または容認することができる。
となります。
 
もう一つの見かた、偽造されたものを設計・確認申請・施工・完了検査の段階で、通常仕事をしている状態で気付かずに済んでしまうか、という点では、
 1.設計者側では、当然気付かないということはありえない。
 2.施工者側では、設計者と施主だけの意思で偽造したとしても、あの構造の内容だと施工に携わる現場の人でもおかしいと気付く。それほどひどい内容。
 3.施主側では、何も知らされずにごまかされれば、気付かない可能性がある。
 4.審査機関では、マニュアルどおりに見るだけだと気付かないのかもしれないが、構造図だけでもちゃんと見れば気付いてもよさそう。
といった感じです。
 
私は、物理・数学的なことも嫌いではないので、木造の構造計算(3階建てor500u超)や耐力壁の計算はほとんど自分でやります。そして自分でやってみてわかることは、建物にとっていかに構造が大切かといことです。それは、単純に法令順守ということだけではなく、その建物の形や建っている土地の状況、その土地の気候に合わせて考えていかなければならないということです。
私の場合木造の仕事の割合が多く、個人の大工さんとの付き合いも多くあります。法令や構造基準などには疎いタイプの大工さんが多い中で、説明をして理解してもらうのは大変なこともあります。材料や金物など、お金がかかったり手間がかかることももちろんあります。が、それをしていくのが私たちの役目です。
今日の話で偽造、手抜き、ごまかし・・・、それぞれの立場でできるか出来ないかなどとお話してきましたが、たとえどんな状況だったとしても絶対そんな事をしないのは、言うまでもなくあたり前のことです。