ネタ切れするまで続く
木曜日は木の話
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2005年11月

その118  地震と木造住宅          11月24日
 
建物の構造計算をするときは、地震によって建物にかかる外力に対して安全かどうかというチェックをします(他に風圧力や荷重・自重もあります)。どの程度の強度を設定しているかと言うと、1.震度5程度の地震に対しては、構造的に損傷しないこと、2.震度6〜7の地震に対しては、構造的に損傷はあったとしても、倒壊はせずに人命を守ることができること、といった具合です。
大きな地震があるたびに、在来工法の木造住宅が倒壊した映像がテレビで放映されます。これは在来工法の木造住宅が地震に弱いということなのかと言えば、そうではありません。
木造のなかでも、2×4やパネル工法は比較的新しく入ってきたため、その時に構造的にチェックされて色んな規定が設けられ、安全性が確保されました。一方在来工法と呼ばれるように昔から使われてきた軸組工法は、構造的に詳しくチェックされないままに慣例とか勘にたよって施工されてきました。そうすると、つくる人の考え一つで構造的に強い建物が出来たりそうでなかったりしてしまいます。
2×4やパネル工法の住宅に住んでいらっしゃる方は、設計の段階で開口部のとり方や2室を続けて開放するときに、ある程度の制限があったことを覚えていらっしゃるでしょうか。その考え方は2×4やパネル工法にだけ必要なことで、軸組工法ではそんな事をしなくても丈夫な家ができる、なぁんて訳がありません。
木造の構造の基本は、壁面の剛性(耐力壁:筋違や構造用合板など)と床面の剛性(火打ち梁や床合板)です。それが必要な量が確保されていてバランスよく配置されていれば、自重の軽い木造は地震に対しては有利であるはずです。
最近、テレビで大々的に取り上げられている構造計算書の手抜きの事件、あれはごく稀な例だと思うのですが、悪質ではないにしても特に木造の建物の場合は、構造的な品質にばらつきがでる可能性が高いと言うことができると思います。と言うような話の続きを、来週にしたいと思います。



その117  地震          11月17日
 
最近、日本でも海外でも地震が多いですよね。私はかろうじて新潟地震の記憶がない年代なので、家が傾いたり倒れたりするような地震は身をもって経験してません。でも、「天災は忘れた頃にやってくる」です。このあたりでも大きな地震が起こっても、おかしくありません。
この地震はなぜ起こるかと言うと、2つのパターンがあるようです。
一つはプレート型というもので、プレートが少しずつ移動する際に出来たひずみが、一気に元に戻ったときの弾みで起きる地震です。地球全体が20枚ほどのプレートでできているそうです。日本近辺には、1.北米プレート、2.ユーラシアプレート、3.太平洋プレート、4.フィリピン海プレート、の4枚ががあって、私たちが住んでいる山形県は、北米プレートに乗っかっています。
もう一つは活断層型というもので、地層に切れ目が生じて、それが横にずれたり縦にずれたりする際に生じる地震です。この活断層は日本のあちこちに散らばっていて、特に近畿地方近辺には多いようです。ちょうど阪神淡路大震災のあたりでしょうか。山形県にももちろんありますし、庄内では旧立川町−旧松山町から旧酒田市にかけて活断層があります。この活断層が地震を起こす可能性は、他の活断層と比べて高い方に入っているという報告もあるようです。
地震の大きさを表すときに、震度○とかマグニチュード○とかの言い方があります。震度というのは、そこの土地での地震による揺れの大きさを表しているので、テレビなどで地震情報を聞いても分かるとおり、各地でその数値が違います。マグニチュードとは、その時に起きた地震そのものの規模(大きさ)を現していますから、一つの地震に対して一つの数値しかありません。
マグニチュードの数値と地震の規模の関係は、0.2上がると約2倍になるそうです。その計算だとM4.0とM6.0は、約1000倍違うと言うことになります。数字から受ける感じと、ずいぶん違いますねぇ。ちなみに、昨年10月23日に起きた新潟県中越地震のマグニチュードは6.8だそうです。その日私は「大工塾」で、埼玉県に行っていました。上越新幹線が脱線してしまったので、帰りは急きょ山形新幹線に替えて帰ってきました。その後も開通するまで何度か山形新幹線を利用しましたが、30分ほど時間がかかるだけでそれほど不便ではありませんでしたね。よくできたものですねぇ。



その116  木造住宅の基礎          11月10日

先週は木の話を休ませてもらいました。先々週の地盤の話に続いて、基礎についてお話したいと思います。
建築基準法では「木造の最下階の柱の下には、土台を設けなければならない。土台は基礎に緊結しなければならない。」となっています。ということは、昔の家のように石の上に束を建てて乗せただけの構造は認められていないわけです。
木造住宅で使われている基礎は、大きく分けると布基礎とベタ基礎があります。地盤改良をした場合は、その改良した地盤や杭の上に基礎が乗っかっているといった状態です。この布基礎とベタ基礎、どちらにするかということもよく問題になります。ベタ基礎のほうが布基礎より強いといった思い込みも多いようですが、決してそんなことはありません。どちらもいろいろな形があるので一概には言えませんが、その違いを考えて見ます。
 ・接地面積:圧倒的にベタ基礎のほうが大きいので、大きな荷重を支えるには有利。(この辺がベタ基礎強しの思い込みの原因かも)
 ・立上り部分(地中梁):布基礎は立上り部分の高さがベタ基礎よりも高い場合が多い。これは、柱の荷重を直接受ける基礎の耐力が高いことを示す。杭を打った場合も、杭の上に乗りながら木構造を支える部分の耐力が高いという事。ベタ基礎の場合は、通常は外周部だけ高くて内部は低い場合が多い。
 ・基礎の自重:これは圧倒的に布基礎が軽い。摩擦杭などの場合は、建物全体の軽量化を図るべきなのでかなり有効。
と言ったところでしょうか。
基礎の工法や地盤改良をどうするかといったことは、地盤調査のデータと建物の形状を合わせて考えて、より良い方法を選択することが大事だということですね。