ネタ切れするまで続く
木曜日は木の話
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2005年9月

その111  放ったらかしの人工林X          9月29日
 
日本が木材を輸入する先の森林資源の破壊とはまったく裏腹に、日本の山は植林されたまま手入れされない状態で、伸び放題・荒れ放題です。手入れしない山がどうなるかというと、倒木・土砂崩れ・水害など、自然災害のような人災のような災害をもたらすようになります。
この間家の山に行ったとき、境界に近い隣の山の木が根っこから倒れていました。(画像があるので見てみてください:http://www.dewa.or.jp/~konno-t/sa05/sa050918-3.JPG)やはり細い木が過密状態になっているところです。7月に行ったときはなんでもなかったので、その後に雨が多かったのが原因かな?と思ってみてきました。あれがもっと大きくなると、土砂崩れになるのかも知れませんねぇ。
この山の手入れには莫大な手間ひまがかかります。その手入れを山の持ち主がが放棄したらどうなるでしょうか。そして、もしその作業や土砂崩れなどの災害の復旧を、公共的な事業で行わなければならないとしたら、たくさんの税金が使われることになりますよね。
いままで話してきた放ったらかしの人工林を、たとえばの話、みんながそれぞれ手入れしたとします。木材を商品として売ることができる人もいれば、いつか自分の家を建てるときのためにという人もいるでしょう。あるいは、直接的には手入れをした本人にプラスに感じることはないかもしれません。でも、日本の山の木を使うことは、大局的にみると最も経済的なことのような気がします。私は経済のことにあまり詳しくないし、それを計算する方法もよく分からないので、今ここで系統だててうまく説明できませんが、きっとそうだと思います。あなたもそんな気がしませんか。



その110  放ったらかしの人工林W          9月22日
 
日本の木材自給率は、1950年ごろまでは100パーセントに近い状態でした。その後木材の輸入自由化が段階的に進められて、1990年代後半には、自給率は20パーセントぐらいになっています。なぜ急激に木材の輸入が進んだかといえば、理由は簡単で、安いからです。
では、なぜ遠くで伐り出して、船で運んでくる外国産の木材が安いのかと言えば、ひとつはその時期に日本の円が変動相場制になって、高くなっていったということがあります。しかしそれよりも、日本が輸入する木材の多くは現地で伐り出して買い付けるときに、それを手入れして育てる手間ひまの分をを見ていないからです。中には盗伐も多いと聞きます。市場経済では、流通の中には利益が確保されても、元になる生産者には確保されないということでしょうか。発展途上国の貧困につけ込んだ、弱いものいじめのような気がしますよね。これはどういう事かというと、伐り出して裸になった土地に、植林して再生していく手間をかけることが出来ないことにつながります。そのツケがこれからどんな形で現れてくるのか、なんとなく想像ができますよね。
日本で使われる木材のうち、建築用材となるのは約3分の1程度だそうです。ですから、木造建物だけで木の無駄使いということはできません。しかし、他の先進諸国の住宅のサイクルが70〜80年であるのに対して、日本の住宅のサイクルは30年ほどというのは、短すぎますよねぇ。それも1960年以降訪れる消費社会にあわせて、急激に短くなてきたと言えます。
そして、この木材を運ぶためには多くの化石燃料が使われているということも、一緒に考えていかなければならないことです。



その109  放ったらかしの人工林V          9月15日
 
日本では、昔から生活に木を使ってきました。建物や家具・民具・橋・など等、山の木を伐ることはあたり前のことだったわけです。日本の面積の多くを占める山は、地形的に急な傾斜が多く、地質的にも弱いのだそうです。その山の木を伐ってそのまま放っておけば、水害や土砂崩れにあったり木材が不足したりしますから、比較的育てやすくて用材になりやすい針葉樹(スギやヒノキ)を植林してきました。植林しながら山と共存することで、自然とうまく付き合ってきたわけです。それが江戸時代からつい最近まで続いていました。
では今はどうなのでしょうか。1950年以降に植林された多くの山は、日本の山の蓄材量を増やしてくれて、緑の山をよみがえらせてくれました。その人工林が放ったらかしにされている状態です。
植林するときは、始めは密植にします。それを成長に合わせて除伐・間伐しながら、残した木を大きく育てていくわけです。そういった手入れをしないと木はうまく成長できないし、山の環境も壊れていくわけです。
今年、飼っている金魚が産んだ卵がかえって、子金魚がいっぱい生まれました。自然淘汰もあるのでしょう、2ヶ月たった今は残っている子金魚は14匹、それでも大きくなってきて飼っている水槽は密の状態になっています。間伐のように間引くわけには行かないので、そろそろ別の水槽に分けるか、大きい水槽に移すかしないとだめですね。山の木もおんなじでしょう。
人工林は木の畑と言うことができると思います。手入れしない畑は雑草や虫であらされてしまって、作物が採れませんよね。



その108  放ったらかしの人工林U          9月8日
 
山林の所有面積が少ない人、たとえば1町歩の山がある人は、100年でまわそうとすると一年に1/100町歩分の木しか伐ることができない、これでは商売になりません。個人の山の持ち主には、1町歩・2町歩といった所有面積の人も多いはずです。これでは、ますます山に行かなくなります。こういった山は、じゃぁどうするのか、答えは簡単です。100年に一度、自分の家を建てるときに、その木を伐って建てるのです。
ここでの問題も、やはりそんなに長い目で見て山の手入れをする人がいるかと言うことです。そういう人が少なくなったから、今の山の現状があるのでしょうね。そんな事をするよりも、買ってきた木を使ったほうが、早く安く簡単に家が出来てしまったりするわけですからね。
で、片付けてしまうと、問題が解決しません。山の仕事はサイクルが長い、この事は先週からの話で短所のように話して来ましたが、そうとばかりは言えないようです。
たとえば会社では、今日が期限の仕事や今月末が納期の商品、それは期限を守らないとお金になりません。あるいは農業、5月に田植えをするのに、今年は間に合わないから7月になったとか、いま困っている害虫の防除を来月にするなんて事では、作物が採れません。
でも山の仕事は、春は忙しいから秋に、今年は忙しいから来年に、と伸ばしていってもほとんど影響ありません。なんせ、杉を植えてから30〜40年も放ったらかしにして置いたわけですから、それに比べたら半年や一年どうって事ありませんよね。
と言うような、長ぁーい目で、のぉーんびりと山の手入れをしてみる、なぁーんてのはどうでしょう。
あなたの家には、「山」ありませんか?



その107  放ったらかしの人工林          9月1日
 
先週、放ったらかしの人工林が問題だという話をしました。では、その問題の人工林はどうしたらいいのでしょう。
答えは簡単です。手入れをすればいいのです。
今、この辺の山で杉が植えられているところで、ちゃんと手入れして杉を用材として出すことが出来るようになっている山が、どのぐらいの割合あるのかわかりませんが、下刈りもしないしツルも払わない、除伐・間伐もしない山がたくさんあることは確かです。そういった山は荒れ放題で、中には手遅れと言ったほうがいいようなところもあります。
せっかく植えた杉、それなのに山の手入れをしないのはなぜでしょう。この答えも簡単です。杉を育てても採算が合わない=生活の糧にならないからです。
それは、国産材の値段が下がったことが理由ど思われますが、そればかりではない様な気がします。
たとえば、100町歩の山があるとします。それを手入れして1年に1町歩分の杉を伐採して売ったとします。ある程度のお金になりますし、100町歩を1年1町歩づつ、100年でまわす、このぐらいあると商売として成り立たせることができそうです。
問題は、100年のサイクルで考えて、山の手入れをして杉を育てていく人がいるかと言うことです。そんな事よりも他の仕事(農業など)をしたほうが、短期間のサイクルで収入を得ることが出来ます。あるいは会社などに勤めれば、毎月給料がもらえたりするわけで、そのほうが見通しが立てやすいですよね。そうすると、人は山に行かなくなるわけです。
では、山の所有面積が小さくて1町歩しかない人はどうか、と言うような話を来週したいと思います。