ネタ切れするまで続く
木曜日は木の話
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2005年1月

その77  木造という構造X          1月27日
 
木造は鉄骨造や鉄筋コンクリート造と違って、構造本体を構成する要となる木が工業製品ではなく自然に育ってきたものです。そのために大きな違いが2つあります。
一つは、お金をかけて生産ラインを整えて原材料を仕入れれば、大量生産(木自体を)できるというものではないことです。杉が柱として使えるようになるには、最低40年以上必要です。
もう一つは、同じ材料を揃えても、その一つひとつが強度や含水率・変形の仕方などの違いが、鉄やコンクリートに比べて大きいということです。個体差が大きいために、一つの規格として統一しにくいと言うことがあります。
その木の特徴を抑えて作っていく方法が工場生産できる壁式工法や、軸組み工法の中でも人工乾燥材や集成材・合板・構造金物を使って造る工法です。表面的には狂いが少なく、施工が早く均一で安定していると言えます。
木の話74でお話した伝統型の工法は、その木の特徴をそこに携わる人の手で、できる限りいい方向に向くように管理していかなければなりません。木を育てる、木の乾燥、どの部材にどの向きで使うか、どこをとっても手間がかかることが多いと言うことになります。大規模な生産ラインや商業ルートには、乗りにくい状態です。また、構造的にも法規の仕様規定に合わせにくいところがあります。
色々な特徴を踏まえて、あらためて住宅(建物)を木造で建てると言うことがどういうことなのかを考えていきたいと思っています。



その76  軸組み工法          1月20日
 
壁式工法や丸太組み工法には、設計・構造計画上のいくつかの決め事があります。
一つの耐力壁の長さ0.8m以上
コーナーには耐力壁を配置する
耐力壁で囲われた部分の面積が40u以下
などです。
しかし、軸組み工法にはそういった決め事があまりなく、良く言えば自由に、悪く言うといい加減に造られてきた部分があるように思います。今は、筋違の配置や仕口の種類など法令や告示で決められてきていますので、ある程度は一般的な仕様として確立されてきているかと思います。
しかし、住宅を含めて木造は(特に在来工法)平面的にも断面的にも整形でない場合が多く、柱や壁のの配置も鉄骨造や鉄筋コンクリート造に比べて整っていない場合が多いようです。そうすると個々の建物の違いを、一般的な仕様規定だけで当てはめてOKとすることに、疑問を感じる部分が出てきます。
それをどこまで細かく構造計算するのか、あるいは仕様規定の通りにつくってよしとするのか、ちょっと考えるところです。仕様規定でカバーできる範囲の建物かどうか、かかる手間とその効果と、色々な要素が絡むので一概には言えません。私たちにできるのは、できるだけ施主に判りやすいように説明しながら、一番よい方法を考えていくことです。



その75  木造という構造W          1月13日
 
一口に木造といっても色々あります。
大きく分けると
 1.軸組み工法
 2.壁式工法
 3.丸太組み工法
となります。
壁式工法の中には、工場で壁体を作って現場で組み立てるパターンのミ○ワホームさんや、壁体を箱にして現場に運んでくるセ○○イハ○ムさん、また、現場で壁を作っていくツーバイフォーなどがあります。柱や梁はなく、壁体自体が構造体となります。
丸太組み工法で思いうかべるのはログハウスです。正確にいうと丸太を使ったものをログハウスというので、その中で丸太を横にして積み上げてつくったものを丸太組み工法という事になります。丸太ではなく製材した角材でも横に積み上げて造れば丸太組み工法です。校倉造に代表される正倉院宝物庫も丸太組み工法という事になります。
では軸組み工法はというと、垂直な柱と水平な梁を基本にした工法ということになります。丸太を使ってもそれを柱・梁として使ってつくれば軸組み工法(のログハウス)となります。
前回までの三回お話してきた木造は、この軸組み工法についてです。日本で建てられている木造建物の中では、軸組み工法の割合が一番多いはずです。(データはありません・申し訳ない)そして、昔からどこでも普通に建てられてきました。
木造の軸組み工法はその普通さ故に、そして同じ寸法の同じ種類の材料でも個体差が大きいために、実はあまり構造的な理論として確立されていなかったと言えるような気がします。というような話をこの次にしたいと思います。



その74  木造という構造V          1月6日
 
2005年が始まりました。今年も木の話をよろしくお願いします。
今、木造の軸組み工法の中でも、伝統型の工法で極力金物を使わない建て方を見直す動きが全国的にあります。県内でも、私が知る範囲でもここ2年ぐらいの間に3棟の住宅が伝統型の工法で建っています。
このような建物は多くの材料が、解体のときに痛まないで取り外すことができます。そうするとその建物を移築したり、その材料を使って建物を建てたりできるわけです。
今、日本の産業廃棄物の4分の1が住宅関連だというデータもあります。最近の日本の木造住宅のサイクルは、25〜30年ぐらいでしょうか。欧米では80年ぐらいと言いますから、日本はその3分の1でせっかく作った住宅をゴミにしているわけです。
物の値段が高かった昔と違って、丁寧に解体してリサイクルするよりも廃棄したほうが簡単で安上がり、ということもその一因でしょう。
木は保存の状態がよければ、自分が育った年数以上に長持ちします。普通に考えても50〜100年はもっていいはずです。
どのような家づくりをするのか、何を優先するのかは人それぞれです。が、自分が建てた住宅がどこから生まれてきて、最後に解体されるときどうなっていくのか、また解体された材料はどうなるのか、そのことが積み重なると周りにどんなふうに影響するのか。
私もまだまだ勉強中ですが、相当大事なことのように思います。