ネタ切れするまで続く
木曜日は木の話
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2004年12月

その73  木造という構造U          12月23日
 
先週の木の話は、私の都合で休ませてもらいました。で、今日は祝日ですけども木曜日ですから木の話です。
この間、木造の耐力壁の話をしました。
その主なものを紹介すると
 1.筋違  2本の柱と上下の横架材間に斜めに入れた木材
        45×90:2倍、30×90:1.5倍
 2.構造用面材(合板や無機質系のボードなどがある)
        貫にとめる場合と、下地材を組んで留める場合がある
        その留め方と面材の厚さによって2〜3倍
他に木ずりを打ち付ける方法や、筋違と同じように鉄筋を斜めに入れる方法もあります。
壁量計算では、まずその必要量を計算します。
たとえば、壁倍率2.0で長さが1.8mの壁と、壁倍率4.0で長さが0.9mの壁、この二つは壁量計算の計算では同じに扱われます。しかし、その時に柱や土台の接合部にかかってくる力はかなり違ってきます。地震のときに柱にかかる引抜力を見ると、1.5〜2倍ぐらい大きくなります。その分接合部に金物などで補強するわけです。
開口部を大きくとったり、柱や壁で仕切らないで大きな空間を取るような間取りでは、こうした無理のかかった箇所が必ず出てきます。でも、筋違を多くとることができれば、一つのところに無理がかからないでバランすよく配置することもできるわけです。
人間で言えば大きな骨だけを鍛えて丈夫にするか、小さな骨や筋肉や関節を鍛え(柔軟にして)トータルで丈夫にするか、と言った違いでしょうか。
また、筋違いの配置のし方でも接合部にかかる力が違ってきます。
規定に合うようににつくっているからそれでいいのだ、と言う考え方もあります。が、外観や表面的な綺麗さだけを優先するのではなく、その建物がどれぐらい構造的に健全な状態になっているのかと言うようなことも、ちょっと気をつけて考えてみると一味違った家づくりができるような気がします。



その72  木造という構造          12月9日
 
木造の建物で500u以下・2階建てまでのものは、構造計算をしなくてもよいことになっています。とは言っても、どうやって建ててもいいと言っているわけではありません。
厳密な構造計算ではありませんが、通常「壁量計算」と言っている耐力壁の量を計算して、さらにその耐力壁をバランスよく配置しなければならない、と言うことになっています。
 
壁量の計算では何をしているかと言うと、
 
1.地震に対しての壁量−床面積から算出
2.風に対しての壁量−見付面積(立面図の面積)から算出
3.耐力壁の配置のバランスチェック−平面的な配置のバランスのチェック
 
主にこの3つです。
 
計算の際に用いる係数は、ある程度大きな風や地震を想定しているので、それより不足している建物がすぐに傾いたりつぶれたりするわけではありませんが、必要な措置をしておかないと、いざという時に大変なことになるわけです。
当然のことながらすべての建物に対して壁量計算をして、その図面を建築主・施工者に説明するのはもちろん、確認申請につけて審査を受けるわけです。
 
ちなみに壁倍率1.0とは
 
長さ1メートルの壁
受ける水平力200kg
水平変位 H/120
 
となっています。
 
たとえば、壁倍率1.0で長さが1.8mの壁と、壁倍率2.0で長さが0.9mの壁、この二つは耐力壁の量の計算では同じに扱われます。が、建物全体として実際に地震や風を受けたときにどうかと言うことです。というような話を、この次にしていきたいと思います。ちょっとややこしいかもしれませんが、とても重要な話ですよ。



その71  木材の天然乾燥          12月2日
 
今日は木材の天然乾燥について話をします。
まず天然乾燥で家を建てる場合の手順の例をを示すと
 1.葉枯らし乾燥:伐採した状態で葉をつけたまま、山で乾燥させる
    期間:3〜5ヶ月、水分:70〜80%
 2.製材−桟積乾燥:材料として使われる大きさに製材し、空気が通るように材間に隙間を空けて積んで乾燥させる
    期間:2〜4ヶ月、水分:30〜35%
 3.加工−建て方:木材を加工し現場に運んで建てる
    期間:2〜3ヶ月、水分:25〜30%
 4.造作−竣工:化粧材をつけたり仕上げ材を張ったりして建物が出来上がる
    期間:3〜4ヶ月、水分:15〜20%
木材は天然乾燥では半年かけても30%程度です。それでは仕様書の20%以下という基準にあいませんよね。そうなのです、20%という数字にだけこだわると、天然乾燥の木材はほとんど使えないことになります。
では、加工する前にさらに3〜4ヶ月ストックして乾燥させたらどうかというと、やはり仕上げ・加工しない材料の含水率は20%まではなかなか落ちません。
天然乾燥材(構造材)は、作業場に入ってきたときに30%程度の含水率だとしても、仕上げられ、加工され、現場で建てて住宅ができるまでの間に、それなりの期間をとればちゃんと20%以下まで乾燥します。また、真壁づくりにすれば建物ができたあとでも自由に水分を吸ったりはいたりします。
私の事務所は、柱が表面に出ている真壁づくりです。天井には梁も現れています。上棟式は真冬1月31日、なんと雨降りでした。柱にはひび割れ、梁にはねじれが出てきています。「どの程度出るのかな?」と半分実験のつもりでやったわけですが、木はそれぞれに違っていて、ほとんど狂いが見えないものもあるし、相当変形しているものもあります。でも、建物として支障があるようなことはありません。
いま建てられる住宅の多くは加工はプレカットで、加工は短期間にできるし、大壁で建てたらすぐに木が外気から遮断されてしまう状態で、木が乾燥している暇がありません。こういった場合は、人工乾燥材や集成材を使うということになります。
どちらがよいかという問題ではなく、どんな家づくりをしたいか、自分はどんな家に住みたいかということで、どの方法を選択していくかなんだと思います。