ネタ切れするまで続く
木曜日は木の話
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2004年11月

その70  木材の乾燥          11月25日
 
木は伐採された状態では100〜200%の含水率があります。
国土交通省の建築工事共通仕様書では、構造材の含水率を20%以下としています。これは木材を現場で使用する前、製材して加工場に入ってきた状態での検査になります。
天然乾燥でそこまで乾燥させるのは至難の業といったところで、そのため人工乾燥材が多く使われるようになっています。また、乾燥による収縮や変形が嫌われることもあって、住宅の現場でも集成材と同様に人工乾燥材が見られるようになっています。
木材にとって乾燥というのは非常に大事な問題です。全国各地の木材産地でも、人工乾燥・天然乾燥・両者併用、いろんな方法で苦労して乾燥させています。
人工乾燥にも色々あります。主な乾燥方法と、20%程度まで乾燥するのにかかる日数・乾燥温度をあげてみると、
 蒸気式(一般)      14日    70〜80℃
 蒸気式(高温)       5日  100〜120℃
 勲煙乾燥         14日    60〜90℃
 高周波加熱式真空乾燥 3日    50〜60℃
などです。
同じ方法でもかける温度によって処理日数や処理後の含水率に違いが出ます。もちろんそれぞれ乾燥にかかる費用も違ってきますから、それが木材の値段にも関わってくるわけです。
ちなみに、構造材程度の大きさのものを自然乾燥させた場合、半年かけても25〜30%程度の乾燥状態のようです。
では、天然乾燥材は使えないのかと言うとそうではありません。と言うような話は来週あたりにしたいと思います。
 


その69  人工乾燥と天然乾燥          11月18日

10月に「大工塾」という講座で、長ホゾ・込栓打などの伝統型工法の仕口の強度試験をしてきました。破壊のし方は色々ありますが、私がしてきた実験のひとつ“長ホゾ込栓打ち”ではホゾが抜ける形になりました。ホゾは込栓に沿って綺麗に抜けていました。
同じ実験を人工乾燥材(高温乾燥)でやった前のデータを見せてもらうと、その引張りに対する耐力は自然乾燥材の半分以下でした。その破壊のし方は木が崩れた、といった感じでした。・・・これはどういうことなのでしょう。
人工乾燥された材料は、ある程度収縮していて、その後は変形しにくくヒビもはいりにくくなります。が、目に見えるヒビはなくても、乾燥の段階で木の組織そのものに微細なヒビが入っている状態なのだそうです。
つまり、スカスカのもろい状態になっていて、木の特徴である粘り強さがないわけです。実際に人工乾燥材を手作業で加工すると、欠けるようでノミが入れにくいと大工さんが言っていました。まさに実験のとおりですね。
雰囲気からすると人工乾燥材はビスケット:変形しないけど壊れやすい、天然乾燥材はスルメ:形は変わっても粘り強い、ってとこでしょうか。
人工乾燥が木にとって良くなさそうだ、と片付けるのは簡単ですが、今の現状では人工乾燥材を全く使わないということは考えられません。集成材はほとんどが(たぶん)人工乾燥です。それに、人工乾燥もいろんな方法があり、高温になるものや低温で乾燥させるものによる違いもあるかもしれません。
ではどうするかというと、やはりその特徴にあった使い方:人工乾燥であれば構造用合板を使ったり釘や金物で留めて力を分散させるという方法が適していると思われます。伝統型工法を採用するなら含水率の数値だけにこだわらずに天然乾燥材を使う、これも適材適所ということになるのでしょうか。



その68  構造用集成材W          11月11日
 
今日は11月11日「おぉー、1が四つだ」などと思いながら、集成材の話も3回で終わりかなと思っていたのが、11月11日にあやかって(全然関係ないけど)構造用集成材Wにしてみます。
住宅の現場でもよく見るようになった集成材、それにヤング係数の表示があることは前にお話しました。それと一緒に“使用環境”という表示があります。
これは、使われる部位の湿気や、外気にさらされているかどうかなどの状況にどれだけ対応できるかといったものです。
使用環境1は、湿度が高くなる・外気にさらされる・高温になるなどの使用環境に対して、高度な性能があるものということになっています。
使用環境2は、耐久性・耐候性・耐熱性に対して通常の性能があるものといったないようです。
通常の梁・柱などに使われるものは、使用環境2の集成材です。今はユニットバスが多いので浴室周りだからといって特に湿気が多いかというと、そうでもないかもしれません。床下も通常の換気をしていれば、それほど湿気がたまることも無いようにに思います。
また、すっかり定着してきたシックハウスという言葉、ムクの柱を使っていれば使用制限はありませんが集成材は接着剤を使用しています。当然規制の対象になってくるわけです。
しかし、現在現場で目にする集成材はほとんどが最高等級のF☆☆☆☆なので、その点については心配いらないと思います。
それと、集成材とは言え木は木です。湿気を吸えば膨らんだり、乾燥すれば縮んだりします。そのために小さな変形やひび割れが生ずることもあります。しかし、強度の面から見れば問題になるようなことはまず無いので、許容範囲と考えてよいでしょう。 



その67  構造用集成材V          11月4日

この間話をした集成材のヤング係数の表示:E90やE105などというのは、その強度の材を集めて集成材をつくっているという事になります。ということは、わざと違った強度の材料を貼りあわせることもできるわけです。
そんなことをする必要があるのかいな、と思いますよねぇ。・・・それがあるんです。
柱は通常、垂直に立てた形で使われます。あたり前すぎますね、柱が傾いていてはそれこそ欠陥住宅です。柱の上に荷重がかかった場合、断面に対して垂直方向の圧縮の力がはたらきます。この場合の力のかかり方は、断面に対して全部圧縮の力です。こういった材料は、全部同じ等級の挽き板でつくられます。
梁は寝かせた形で使われます。上に物を載せると下にたわむ、この場合梁の断面にどのような力がかかっているかというと、断面の中心を境に上側に圧縮、下側に引張りの力がかかっています。中心は応力0の状態で中心からの距離に比例して応力が大きくなり、上端と下端でそれぞれ最大になります。
そのため梁用の集成材では中心部分の挽き板はE100、上下の挽き板はE120・E160というように、異等級の素材つくられているものがあります。応力の大きさに合わせて、その部分ごとに違った等級の部材を組み合わせて一つの材料を作るというわけです。
集成材ではこのように材料を無駄なく使っていくことができるわけですね。ムク材では、やはりこんな芸当はできません。