ネタ切れするまで続く
木曜日は木の話
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2004年10月

その66  構造用集成材U          10月28日
 
一般の住宅の柱や梁にも、普通に集成材が使われる昨今です。
木材にはJASで、角材や板材などの分類があることを前に話しましたが、集成材にも同じように分類があります。
一般の木材とは違って
 大断面:断面の一辺が15cm以上で、断面積が300cu以上のもの
 中断面:断面の一辺が7.5cm以上でもう一辺が15cm以上のもので、大断面以外のもの
 小断面:断面の一辺が7.5cm以下、または一辺が15cm以下のもの
といった具合です。
通常柱として使われる12cm×12cmの部材は小断面になります。また、カウンターなどに使われる巾の広い45cmぐらいの材も、厚さが7.5cm以下であれば小断面ということになります。住宅の梁に使われそうな12cm×30cmの集成材は、中断面ということになります。
集成材は2.5〜3cm程度の挽き板を貼りあわせて作りますので、その材の性質(強度・ヤング係数など)をそのまま引き継ぎます。ですから思ったとおりのヤング係数の材料を、必要な寸法で必要な数だけすぐにそろえることができるということになります。50cm×50cmの大黒柱、なぁーんて物も簡単にできてしまうわけです。
んッ、すごいですね。ムク材ではそうはいきませんからねぇ、これにはかないません。
 


その65  構造用集成材          10月21日
 
構造用集成材というと、すこし前までは大断面の部材など特殊なものという感覚でした。
私が初めて構造用集成材として意識したのは、実は真壁の和室の柱でした。集成材の表面に化粧の単板を貼ったもので、20年以上前のことです。
和室の化粧の柱は、そのころからひびが入るのを嫌われることがあったようで、4面が現れてくるような“4面無節”といったものは背割りもできないので、集成材を使っていたと言うわけです。ですから、使っていてもごく一部でした。それが今ではあたり前のように使われてきています。
真壁でなくても壁内部で柱が変形すると、それが表面の仕上げに凹凸や割れとして出てくるといった症状がでてきて、その処理に手間取ってしまうと言うことが問題視されてきてからのように思います。
しかし今は柱はもちろんですが、土台・梁・間柱なども集成材が標準という場合も、決して少なくはないようです。
それはやはり、構造用集成材の特徴である
1.変形・伸縮が少ない
2.強度のばらつきがない
3.大きな断面の材、巾の広い材が自由にとれる
と言ったところで、ムク材の弱点を見事にカバーしているからなのでしょう。
集成材とムク材、どちらを選ぶかはそれぞれの考え方次第ですが、その特徴を知った上で使う場所に合ったものを選ぶ、やはり適材適所という事だと思います。
 


その64  木材のたわみ          10月14日
 
木構造の部材が決まるのに、たわみの許容値で決まる場合が多いということは先週お話しました。と言うことは、木材にとって圧縮・引張り・せん断・曲げの強度よりも、たわみは重要な意味を持っていることになります。
先日私が通っている「大工塾」というところで、木材のたわみの実験をしました。そして、その結果から木材のヤング係数を出して、梁の部材寸法を決めると言うシュミレーションをしてみました。
そのなかで面白い発見をしました。何種類かあった部材は寸法や等級の条件が同じであれば大体同じ係数が得られたのですが、ひとつだけ大きく数値が違うものがありました。
105×45の平使い・心去りの2つの部材で、片方はE66、片方はE83と20%以上も違う数値が出たのです。繰り返して実験しても同じ結果でした。???と思いましたが、その二つの部材をよく見ると・・・・・、分かりました。
片方は厚み45mmの中に年輪が9本(目が粗い)、もう片方は年輪が12本(目が詰まっている)、この差がそのまま係数の差に表れたんですね。
材種や等級だけでなく、目の詰まり方が強度に影響してくる訳です。と言うことは、木の成長する環境、過程が強度に影響してくると言うことになりますね。
本や人の話では聞いていたことでも、実際にやってみて結果として出てくると「なるほどぉー」と思ってしまいます。貴重な体験でした。
 
先週の問題の答え
たわみの量は1/8になります。
ですから、床を支える梁のたわみを少なくするには、巾を大きくするよりもせい(高さ)を大きくとったほうが効果的と言うことになります。
たわみの量を計算で出すときに使う係数を断面二次モーメントと言いますが、この係数は部材の厚さ(高さ)の寸法を3乗しています。その係数が分子にくる計算式でたわみを出すので、厚さが二倍の場合:2の3乗分の1=1/8になると言うわけです。
棚板がたわむのを押さえるには、板を厚くするよりも、板の下に桟をつけたほうが有効だと言うことが、このことからも分かりますね。
 


その63  ヤング係数          10月7日
 
ヤング係数という言葉、聞いたことがある人はあまりいないと思います。あなたの肌年齢を示す係数・・・、ではありません。
一言で言うと木材に荷重がかかった時の変形しにくさ(たわみにくさ)を示す係数で、数値が大きいほど変形量が少ないということになります。(一言でありませんでしたね)
たとえば、橋を架けたように両側を支点にしておいた板の真ん中に本を置けば、板は下のほうにたわみますよね。この度合いを示すのが曲げヤング係数(E)です。
その本の重さが重くなれば、その分たわみの量も大きくなります。あるいは、同じ重さでも支点の距離が大きければ、たわみの量が大きくなります。そのことは容易に想像できますよね。
構造計算では、曲げ、せん断、引張り・圧縮の強度とたわみの量をチェックします。このヤング係数が、構造部材の寸法を決める大きな要因になります。特に木造の場合は、たわみの量の許容値で部材寸法が決まる場合が多いからです。
木・鉄・コンクリートを比べると、想像してみても木が一番たわみそうな感じがしますよね。鉄も木材ほどではないにしても、かなりたわみます。それに比べてコンクリートは、力をかけても目に見えるほどたわむことは通常なく、その前におれてしまいますよね。
集成材には、このヤング係数の表示がしてありますので、現場で木材を見るとシールなどに書いてあったりします。
たわみの量(たわむ度合いでなく何mmたわむかという物理的な量)は部材の大きさによって違ってきます。同じ重さをかけた場合、部材の巾を二倍にするとたわみは1/2になります。
ここで問題です。
同じ重さをかけた場合、部材の厚さ(高さ)を2倍にすると、たわみの量は何分の一になるでしょう。