ネタ切れするまで続く
木曜日は木の話
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2004年9月

その62  シロアリ          9月30日
 
おとといの火曜日、4年前に家を新築したお客様から電話があり、床にシロアリの幼虫が落ちているとの電話がありました。床に落ちているというのかちょっと変でしたが、シロアリであれば一大事です。すぐに飛んでいきました。
その虫は全部で10匹ほどいたそうで、そのうちの5匹がケースに入れてありました。見てすぐにシロアリの幼虫でないことは分かりました。
そこにいたのは蜂の子状の幼虫で、足はありませんが上下の区別がはっきりしていて、体を伸び縮みさせながらモソモソと上手に這う、といった感じでした。蜂やアリの仲間は、上下の区別がはっきりせずに這うのも上手ではないですよね。(詳しい方、間違っていたら教えてください)
ではシロアリはどうかというと、アリと同じような幼虫になる・・・、のではありません。シロアリはアリではないのです。
シロアリは卵からかえると、親のミニチュア版、頭もあれば胴体もあるし足もあります。ですから蜂の子状の虫は、シロアリの幼虫ではないということになりますね。
シロアリとアリの違いはもっとあって、アリは頭・胴体・お尻(呼び名は正式ではありません)の三つに体が分かれていますが、シロアリは頭・胴体の二つです。もともと違う種類の虫なんですね。
シロアリと同じように卵から出てきたときに親と同じ形をしているものは他にもいます。私が目にする範囲で言うと、カマキリ・イナゴ・ゴキブリなどです。一昨年、事務所の玄関前ににカマキリが卵を産んでいたらしく、朝きたら体長7〜8ミリのカマキリが100匹ほど(数えたわけではありません)ウヨウヨしていました。小さいのに一丁前に鎌を持っていて、指を近づけるとその鎌を振り上げてきます。かわいいものですね。
床に落ちていたその虫はなんだったかというと、私では分からないのでしかるべきところに問い合わせてみました。幼虫の段階での特定は難しいらしいのですが、蛾の仲間かクリシギゾウムシなどの甲虫類だろうということでした。
その家ではその虫が落ちていた場所のすぐ脇に、ゆでる前の栗を数日間置いていたそうです。たぶんその栗から栄養をたっぷりとった幼虫が這い出してきたんでしょうね。



その61  板材と角材          9月23日
 
柱の断面は通常正方形で、こういった材料を角材と呼んでいます。床に張るフローリングや壁に張る羽目板の断面は細長く、これらは板材と呼ばれますよね。
断面が正方形になる材料でも天井の下地に使うような、柱より細い36mm角程度の材料は角材とは呼びません。同じように断面が細長くても、敷居や鴨居に使うような42×120程度の材料は板材とは言いません。
そうすると、背のある梁材のような120×360程度の大きな材料は角材?などと考えていると、夜も眠れなくなってしまいますね。実はこの製材された木材は、JASで断面の寸法によって呼び名が決められています。
 
ひき角材:巾・厚さともに75mm以上
ひき割材:厚さ75mm未満、巾は厚さの4倍未満
板材:厚さ75mm未満、巾は厚さの4倍以上
 
といった具合です。
そうすると梁材のような大きな材料はすべて角材ということになりますね。
 
ひき角材の中で断面が正方形のものを正角(しょうかく)、長方形のものを平角(ひらかく)といいます。
ひき割材の中で断面が正方形のものを正割(しょうわり)、長方形のものを平割(ひらわり)といいます。
板材の中で巾が120mm未満のものを小幅板、巾が120mm以上のものを板と言い、厚さが30ミリ以上のものを厚板といいます。
 
そうすると敷居は平割のひき割材、36mm角の天井下地は正割のひき割材という分類になりますね。
 
みんなにそれぞれ名前がついているわけです。そう思って材料を見てみると、ひと味違った見方が出来ますよ。



その60  背と腹          9月16日
 
この間の日曜日に、午後から山に行ってきました。もちろんチェンソウを持って行き、木を伐ったりします。
山ですから、木が生えているところは斜面です。当たり前すぎますね。この斜面に木が育つ場合に、木は地面に直角ではなくまっすぐ垂直に立とうとします。そうすると特に急な斜面では、地面に近い部分が曲がっている状態になります。
この曲がっている部分の谷側を“背”、山側を“腹”と言います。斜面に高いほうを向いて海老が立っているといった感じです。(たとえが変ですね)
この木を谷側に倒すときは、最初に背のほうにVを横にしたような形で受け口を切ります。そのあとに腹のほうから切り込んでいきます。
木は何十年かずっと斜面に立っていて、常に斜面の山側に曲がろうとしてきています。そのために山側からチェンソウを入れると切り口を閉じるような方向に力が働いて、チェンソウが挟まれて取れなくなります。自然の力を感じます。そうならないようにするには、受け口の大きさをちょうどよい具合に調節したり、大きな木ではクサビを使ったりします。
私はまだ未熟なので、時々挟まれてしまいます。倒される木の最後の抵抗のような気がして、ちょっとだけ悲しくなります。
こういった根曲がりの部分は、木をまっすぐに立てようとして力が働くため、細胞の密度が違うのだそうです。そのため製材してからも狂いや反りが起こりやすいわけです。このような部分を“アテ”といいます。
この部分は狂いやすいので、造作材には向きませんね。でも、背の方向からの力には強いので梁などに使うという手があります。山なりに曲がった梁を見える場所に使っているのを見たことがあるでしょうか。きっとこの根曲がりの部分の背を上にして使っているのだと思います。



その59  木を使うという事          9月9日
 
村山市に金山杉を使った、渡り腮(わたりあご)等の伝統型の工法で建築中の家があるというので、その設計者が現場に行く時のあわせて見せていただくことにしていました。8月17日、あした現場に行くけど見に来るかとのメールが入ったので、もちろん見に行くことにしました。
雨降りの月山新道を越えて車で一時間半、現場についたのが午前10時前でした。棟梁にあいさつして、さっそく見せていただきました。外部に無垢の腰板が張っているその家は、平家で腰屋根の部分がロフトになっているこじんまりした家でした。
まず目に付くのは深い軒です。高温多湿の日本で、雨や雪から家を守るには大切な要素です。中は基本的に真壁で、仕上は木とこれから塗る漆喰です。リビングには薪ストーブを置くスペースががありました。家の中はスペースをゆったりとってあって、落ち着いた雰囲気でした。
お昼は、施主とそこの設計者と一緒に蕎麦をいただきました。宮城県からの来店も多いという有名なその店は、古い民家をそのまま使ったいい感じの店でした。もちろん蕎麦も香りがたっぷりで、いい歯ごたえの絶品でした。
その時の話で施主が、外壁のことを心配していました。「今は木の色が綺麗だけれども、その内に色が変わってしまうのがもったいない。今のままの色をずっと保てないか。」という事でした。
完全に新しいのと同じ状態を保つのは、やはり無理でしょう。でも、表面を強化するような塗装をしたり、こまめにメンテナンスをしていればある程度はきれいな(きれいという表現が正しいかどうか)状態を保つことはできます。
たとえば、外壁を見てみます。厚さ15〜18程度のムク板を使っていれば、塗装をしなくても木目が浮き出てくる程度で、簡単に腐ったり崩れたりしません。それに対して、見た目のことで数年毎に塗装を繰り返していく費用がどのぐらいかかるのでしょうか。
でもその前に、木(外壁に使った杉板)の色がかわること自体が良くないのか、という事も考えます。
木は生き物です。私の顔とあなたの顔が違うように、木の模様も一本一本違います。人間と同じように、木も年をとればシワやシミ・クスミがでて来て当たり前なのです。それを嫌うのであれば、あえて木を使う意味があるのかという話にもなりますよね。
その時に話に出たのが、美白で名をはせた“鈴木その子”さんの事でした。そこまでして白くする意味があるのかな?ですよねぇ。
考え方は人それぞれです。でも材料が木であれコンクリートであれ、その素材の持ち味を最大限に生かした使い方をしたいものですね。



その58  無垢材の床          9月2日
 
先週お話したウッドデッキの場合の床はもちろんムク材です。そして最近、住宅の床にムク材を使う場合が結構増えているようです。
ムク材のフローリングを使う際、既製品を使う場合と材料を板に挽いてもらって実(さね)加工をして使う場合があります。
既製品の場合は塗装をしているものとしていないものがあります。最初からしてある塗装はほとんどが浸透性のない物なので、肌触りから言えば多少難があります。ペタペタした感じがしますよね。できれば無塗装のものを使いたいものです。塗装をするとしても木の呼吸を妨げない、浸透性のあるオイルやワックスなどを使いたいですね。
既製品のフローリングは、スギ・ヒノキをはじめとして国産材から輸入材まで様々な種類があります。硬いもの、やわらかいもの、白っぽい色のものや濃い色のもの等々・・・。自分の好みと使う場所にあわせて選ぶことができます。
加工して作る床材はそれに使う木から選ぶことができますから、庄内の山から出した杉のフローリング・というような事もできるわけです。この場合一番問題なのは乾燥です。しかし、挽いてからハザ掛けしたりして面倒を見てやれば、柱や梁などの太い材料よりは早く乾燥します。値段的にも、無節とか言わなければそれほど高くはありません。塗装をするならやはり浸透性のものがお勧めです。
木の特徴のひとつに、結露しにくいということがあります。洗面脱衣室やトイレなど、床だけでなく壁や天井にも使うと、快適な水まわりを作ることができるでしょうね。
ムク材のフローリングの心配な点はメンテナンスですが、塗装などしなくても家を普通に使っていれば特に問題はないようです。でも、多少は見た目もありますので、ツヤを出したい場合は米ヌカがいいそうです。煎った米ヌカを布に包んで床を磨く、そのぐらいなら安上がりだし簡単にできそうですよね。
それと特にやわらかい材料の場合はキズは避けられません。でも、細かいキズなら建物の経年とともに全体的に馴染んでくると、それほど気になるものではないと思います。また、へこんだキズなら濡らした手ぬぐいをあててアイロンをかけると、木が水分を含んで膨れて元通りになります。この場合、浸透性のない塗装をしていると、木が水分を吸うことができないので戻りません。やはり浸透性の塗装のほうがよいようですね。