ネタ切れするまで続く
木曜日は木の話
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2004年8月


その57  ウッドデッキ          8月26日
 
最近住宅を計画する時、リビングから出ることができるウッドデッキがほしいという希望が少なくありません。また、あとから既製品をセットしたり、あるいは自分で作ってしまう人もいます。
当然外に作るわけなので直接風雨があたりますから、耐久性の面ではやはり気を使います。
ウッドデッキに適した木に“イペ”という木があります。この木はシロアリなどに対する抵抗力が高く腐りにくいので、防腐剤の処理がいりません。ということは、裸足で歩いたり寝転がったり、子供やペットにも安心ということですね。
このイペは南アフリカ産の広葉樹で、ラパコールという耐久性を高める成分が含まれています。非常に重く比重は1.0前後あって、強度も強く寸法安定性にも優れています。
こういった木を使う場合は特に塗装などしなくても長持ちするわけですが、色あせはしてくるので見た目を気にする場合はやはり浸透性の塗装をするしかありません。
また木からは「溶脱」といって木の色素が流れ出る、いわゆる色落ちがあります。白っぽい外壁に直接手すりを取り付けたりする場合や、下がコンクリート舗装になっている場合などは、樹種によってはかなり周りに色がつくことがあるようです。しかし、ついた色は漂白剤などで落ちるようですし、害があるわけでもないので気にしなくてもいいのかもしれませんね。
最近では既製品や自分で組み立てるキットも多いので、手軽にウッドデッキライフを楽しんでみてはいかがでしょうか。



その56  柱と胴差し          8月19日
 
ちょっと小難しい内容が続きますが、通し柱の話のついでなので柱と胴差しについての話をします。胴差しとは2階床面外周の梁のことです。
階数が2以上の木造建物における隅柱は通し柱にしなければならない、と建築基準法で決まっています。四角い総二階建ての建物であれば、四隅の柱を通し柱にするのは容易です。が、現実にはいろんな形の建物があります。
たとえば先週お話したように、2階の隅の柱の下に1階の柱が配置できる場合、仕口を切った残りの柱の断面が20〜30%になるような場所でも通し柱にしたほうがいいのかという問題です。通し柱にすると胴差しはそこで切れてしまいます。では通し柱にしないで胴差しを通した場合は構造的にはどうなのでしょうか。
正直なところ、未熟者の私にははっきりしたことは言えません。ただいま勉強中です。でもひとつ言えることは、基準法でいっていることを守ればすべてOKではないし、慣習的に行われてきた事にも根拠に乏しい・意味のない事があるということは確かです。
木造の在来工法は今まで、体系的にきちんと解析・整理されていませんでした。それは、昔から使われていたものだからこれで大丈夫だろうと言うような曖昧な中で取り残されていたからです。逆に鉄骨や鉄筋コンクリートは最初からきちんと構造計算をするようになっています。
じゃあどうすりゃいいのよ、ってことですよね。
計算と実験と実践をとおして、ちゃんと説明できる内容の設計をする、簡単ではないですがそれはもっとも大切なことだと思います。



その55  通し柱と管柱          8月12日
 
先週、物置の話で通し柱はいらないといったときに、五重塔の話を出しました。それだけでは説得力が弱いので、どうしていらないと思うのかをお話したいと思います。
2階建の木造の建物を見た場合、1・2階の柱を一本で通したものを通し柱といいます。1階・2階で上下に連続する・しないに関わらず、1本で通っていないものを管柱といいます。
1階の柱の上の部分=2階の柱の下の部分(仮にA地点と呼びます)に働く力を二つあげると、一つは2階の柱を引抜く力、もうひとつは建物が横に変形したときに耐える力です。いずれも一本の柱で2階まで通っていたほうが強そうに感じますよね。
このうち横に変形する力は、筋違などの壁でもたせているのが現在の工法です。そうすると2階の柱を引き抜こうとする力に対してどうかということです。
でも実際立っている通し柱のA地点がどうなっているかというと、通常の方法で4方から仕口を切っている場合残っている断面は、4寸角の柱で20〜30%です。当然大きな力を支えることができない場合がでてきます。
つまり4寸角程度の通し柱は、1・2階に連続している管柱とほとんど同じと考えなければなりません。
当然そこにかかる力に対しては、金物で補強しないともちません。あるいは通し柱を6寸角ぐらいに大きくするなど組み方を根本的に変えるという手もあります。
A地点の断面が20〜30%しかなくても、建て方の時にかかる力は微々たる物なので、建てている時は丈夫に感じるかもしれません。でも、地震など極端に大きな力がかかった場合などは、通し柱にしただけではとても耐え切れる状態ではないということなのです。
やはりきちんと構造をみて、そこにあった造り方をしていくことが大切なのだと思います。



その54  五重塔の心柱          8月5日
 
先週の土曜日、夕方から友達の家で飲んでいました。つまみはもちろん炭火焼、きれいな夕日を眺めながらの至福のひと時でした。
その友達はちょっとだけ大工さんで、家をセルフビルドで建てています。
今度2階建ての物置を建てたいと言う話で、梁をどう架けたらいいか、通し柱はどうするか、と色々私に聞いてきました。
またセルフビルドなので、大変なら通し柱はなくてもよいといいました。それで大丈夫かというので、五重塔にも通し柱は無いと言うと、真ん中に一本通った柱があるだろうという答えが返ってきました。やはり彼も心柱を大黒柱と思っていたようです。
そんな話をしながら、私が以前に買った(読んだといえない所が苦しい)五重塔の本を思い出しました。次の日早速見てみると、書いてありました、五重塔の模型で地震の実験をしたことが。
それは五層の通し柱を持たない模型での、横揺れに対しての実験でした。結果を要約すると、心柱がある場合の倒壊に要した地震速度は、無いものの2倍以上であるというものでした。この結果がそのまま心柱の構造意義を示すとは言い切れないと思いますが、ひとつの目安にはなるのだろうと思います。
ちなみに、五重塔の形式が伝わってきたであろう中国に見られる多宝塔には、心柱はないそうです。
 
彼が建てるであろう2階建ての物置が五重塔と同じ原理でないことは明らかなので、ちゃんとそれなりの補強が必要です。特に構造に関することは慣習や感に任せるのではなく、きちんと調査なり計算なりで裏づけを取ることが大切なのだと感じています。