ネタ切れするまで続く
木曜日は木の話
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2003年11月

その19 杉と桧          11月27日
 
杉と桧は相性がよいらしく、自然の中でも混交林がよくあるそうです。
この辺の杉山にもサワラ(ヒノキ科ヒノキ属)が勝手に生えてくるようで、私が行く山にもポツポツとみかけます。鳥かなんかが種を運んでくるんでしょうか。
こうやって同じ場所で育って、あいのこ、「雑種」が出来たりしないのでしょうか。杉の素直な性格に、桧の耐不朽性・耐蟻性が加われば、まさに鬼に金棒ってとこですよね。しかし、ヒノキ科ヒノキ属の桧と、スギ科スギ属の杉の間には雑種は出来ないそうです。
同じ属の樹種間ではもちろんできる訳で、アカマツとクロマツの混交林では、アイグロマツと呼ばれる雑種が出来るそうです。
人工的に雑種を作る場合もあるわけで、たとえば花粉症対策として、花粉の飛散量が少ない杉を作ったり、病害虫に強い品種にするための交配が試みられています。
話は横道にそれますが、春、花見の季節に私たちを楽しませてくれるソメイヨシノは、江戸時代にオオシマザクラとエドヒガンとの交配によってできた物だそうです。花が大きくてきれいなオオシマザクラは、葉が出てから花が咲くので、せっかくの花が目立たない。そのため、葉が生い茂るまえに花が咲くエドヒガンと交配して、きれいな花が葉に邪魔されずに見ることができる、ソメイヨシノができたのだそうです。“72へぇー”ぐらいは行きますかね?


その18 木の伸縮、変形          11月20日

さて、最初に前回の問題の答えです。
ケヤキとキリ、乾燥による変形量が大きいのはケヤキです。木材質が多い分だけ変形も大きくなるようです。しかも堅い木は乾燥もしにくいですから、材として使われてからもその変形は続きます。ケヤキなどは伐ってから40年も変形するといわれています。
一般的には針葉樹は広葉樹より比重が小さいので、軽くて狂いにくい物が多いです。(でもキリは広葉樹です。)建築用材としては素直で使いやすいといえますね。
木は方向によって、その伸縮の度合いが違います。樹木が成長して上に伸びていく方向を繊維方向、年輪に対して直角になるほうを半径方向、年輪に対して平行なほうを接線方向と言います。針葉樹の場合、繊維方向の変形量を1とすると、半径方向で5、接線方向で10となります。ずいぶん違うもんですよね。
半径方向と接線方向の変形量の違いが、柱などのヒビの原因です。でも、前にも言いましたが、通常出てくるヒビは、ほとんど強度に影響が無いので心配いりません。
柱として立っている場合、垂直方向の変形量が一番小さいと言うことになります。
ログハウスのように材を横に積み重ねた場合、立っている柱と比べると5倍縮むと言うことになります。そのため、ログハウスでは開口部などの取り付けの際には、“セトリング”といって、縮んでもいいようにスペースを開けておきます。


その17 堅い木、軟らかい木          11月13日

木の中で堅いと言うとケヤキ、ブナ、ナラ等ががあげられます。これらの堅い木がフローリングに使われるのはへこんだり傷ついたりしにくいからです。
木が堅いというのはどういう事かというと、繊維の密度が濃い=空気を含む割合が小さい=重い、となります。比重でいうと0.6〜0.65ぐらいです。
最も重い木はリグナムバイタという木で比重は1.3、と言うことは水に沈むわけですね。実物は私も見たことがありません。
軟らかい木の代表はなんと言っても桐でしょう。比重でいうと0.29、杉の0.38と比べてもずっと低いですね。。冬に寒い部屋で触っても冷たいとは感じません。空気をたくさん含んでいるので、断熱材のようになっているわけです。実際に桐を、外壁に断熱材として使っている住宅もあります。最も軟らかい木は、バルサです。模型の材料に使われたりしますので、知ってる方もいるでしょう。なんと比重は0.1、触ると発砲スチロールみたいな感じです。
木は空気を少ししか含んでいないと、その分冷たく感じます。
冷たいと感じるのは材の温度を手で感じると言うよりも、手の温度を材が吸い取ると言ったほうが良いようです。
堅い木と軟らかい木の違いは、断熱性能のほかに伸縮性があります。木は乾燥にしたがって縮んだり変形したりしますが、比重によってその大小に差があります。
さて問題です。
ケヤキキリ、乾燥による変形量が大きいのはどっちでしょう。」
こたえは来週の木曜日に、とか言ってみたりして・・・。
 
前回の訂正
ヒノキ・ヒバ・サワラの三つははヒノキ科です。
その中で、ヒノキ・サワラはヒノキ属、ヒバはアスナロ族です。
訂正申し上げます。
ついでに米ヒバは桧に近い、ヒノキ科ヒノキ属になります。


その16 桧(ヒノキ)、桧葉(ヒバ)、椹(サワラ)          11月6日

この三つは同じヒノキ属です。ヒノキとサワラは兄弟、ヒバは従兄弟と言ったところでしょうか。現場ではどれもヒノキと呼ばれたりします。
前回、桧は東北にはほとんど無いと言いましたが、東北で有名な物と言えば青森ヒバですね。その防腐防蟻の性能はヒノキ以上、木材の中ではトップです。(前回ヒノキがトップと言っておきながら・・・、すみません。)ヒバ造りで有名な建物には平泉の中尊寺金色堂があります。現在はたぶん金箔を守る意味でしょうけれど、鉄筋コンクリートの覆いの中にあります。改修前はその覆いも木でした。
ヒバも建築用材としては高級かつ万能で、土台・柱・仕上材・建具などに多く使われます。
やはり成長が遅く、あまり造林もされていないようです。天然の青森ヒバなんてものは、だんだん希少価値になっています。
この辺(庄内)の山にあって桧と呼ばれるものは、ほとんどがサワラです。皮の色は、茶色っぽい杉に対して濃いピンクがかった赤でとてもきれいです。材の色は桧が薄いピンク色なのに対して、やや黄色っぽい感じがします。やはりヒノキと同じような性質で、湿気に強く土台などにも使われます。杉に混じってほんの少ししかないので、一般には出回ってないと思います。香りは桧とはやや違い、もう少し杉に近い感じです。「桧よりもさわらか(さわやか)」と言う意味からきた名前だとか。サワラは桶やおひつの最良の材料として使われてきました。温泉旅館の桧風呂の中には、「これはサワラの匂いだな」、と思う物がありますね。
寒い時期、桧風呂の温泉につかって、の〜ンびりしたいですよね。