ネタ切れするまで続く
木曜日は木の話
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2003年10月

その15 桧の話          10月30日
 
桧の特徴は、なんと言ってもその耐水性と耐蟻性でしょう。桧風呂というのがありますが、湿気に強く腐りにくい、そしてその香りのよさがなせる業ですね。
耐久性は抜群で、ケヤキをしのいでトップを行きます。法隆寺が1000年以上その姿を残している事でも分かりますね。
人工林としてもありますが、杉よりも成長が遅く生産量は少ないです。また東北地方にはほとんどありません。
昔から建築用材としては最良とされているようで、一般庶民は使うのを禁じられていたこともあるようです。現在でも平均すると杉の1.5〜2倍ぐらいの値段です。
建築用材としては万能選手で、土台・柱造作材・板材・etc・・・、なんでもOKです。
成長が遅いためか、木目は杉よりもはっきりしていないし、赤身の白太の区別もはっきりしません。
材は乾燥しやすく狂いが少ないし、肌目も細やかできれいです。また、枝が枯れにくいので節があっても生節が多く、その色も赤く艶があってきれいですね。
強度から見ると杉とほぼ同じかやや強いぐらいでしょうか。でも、磨耗にも強いので床材としてもOKで、傷はつきやすいけども暖かいし肌触りがいいということになります。
ちょっと贅沢に「桧の部屋」なんて物も作ってみたくなりますよね。


その14 杉の話          10月23日
 
日本で建築用材の横綱はなんと言っても杉でしょう。それに次いで桧は西の横綱といったところでしょうか。
杉は戦後の高度経済成長に人工造林されて、その割合は約45%になり、北は青森から南は沖縄まで広く分布します。種類も多くってその品種は数百種もあるんだそうです。見ても分かりませんねぇ。
関西あたりは杉よりも桧のほうがモテルのかと思っていましたが、京都や奈良の県木は杉だそうですから、その歴史の中で重要な役割を果たしてきているのでしょう。神社の境内には必ずといっていいほど杉がありますし、民家でも風除けに屋敷木として植えられたりしますね。
杉の学名は「クリプトメリア ヤポニカ」といいます。ヤポニカ=日本ということからも分かるように杉は日本独特の木です。古くから建築用材や薪、生活用品や家具として活躍していたんでしょうね。
ちなみにカナダ杉とも呼ばれるベイスギと言うのがありますが、これは杉ではなく桧の仲間です。日本でいうと黒桧ともいわれるネズコと同じ種類に属します。木の性質も桧と同じように耐普及性があって、外壁の板などにも使われたりします。
 
PS
杉は「直木:すぎ」=真っ直ぐな木という事からきているといわれています。確かに比較的真っ直ぐな木が多い針葉樹の中でも、特に真っ直ぐですよね。


その13 年輪について・パートU          10月16日
年輪の中心を樹心といいます。この樹心に近い赤っぽい部分を心材(赤身)、外側の白っぽい部分を辺材(白太)といいます。この違いは杉が一番良く分かります。
心材は辺材の細胞が死んで変質したもので、硬くて腐りにくくなっています。この心材の部分だけを使えば、杉でも防腐処理なしで土台として充分使うことができます。
赤身と白太が混ざった材を源氏と平家の旗の色からとって「源平」と言います。
材を取る時に年輪に垂直方向に(樹心に向って)挽くと、年輪は縦じま模様になって「柾目」になります。樹心を通らない角度で挽くとタケノコのような模様の「板目」が現れます。
柾目は乾燥した時の収縮が均一なため反りや狂いが少ないのですが、一本の木から取れる量が少ないので、無垢のフローリングの多くは板目です。
板目の樹心に近い側の面を木裏、外側の面を木表と言います。板目の板は乾燥の時に木表側が多く縮むので、木表側がへこむように変形します。フローリングにする場合は肌触りなどの関係で木表が表面に出るように使うのが一般的ですね。
フローリングは硬い木が言いかやわらかい木が良いか?硬い木は傷つきにくいけど足触りはやや劣るし冷たい。やわらかい木は肌触りがよく、冬は暖かく夏はさっぱりしている、けど傷はつきやすい。これも「適材適所」ですね。知り合いの朝日の大工さんに、桐をフローリングとして使いたいから山の木を切る時取っておいてと言ってあります。使うのが今から楽しみです。


その12 木目(年輪)について          10月9日

今日の話は木目(年輪)についてです。
木には木目があります。これは年輪が木の断面に現れた物です。
年輪は、春から夏にかけて盛んに成長するときにできる色の薄い部分と、夏から秋にかけて成長が遅い時期に出来る色の濃い部分の繰り返しです。
「なんという当たり前の話だ」と、何年か前までは私もそう思ってました。ところが違ったのです。
杉や松、桧などの針葉樹はその通りで、成長が早い部分はやわらかく、したがって年輪の巾が詰まっている木ほど強度があることになります。
ところが広葉樹(ケヤキ、ナラなどの環孔材が分かりやすい)の年輪は針葉樹とは全く別で、色が濃く見える部分は春に成長するときに出来る道管(水の通り道)で、夏以降はこの道管がほとんど出来ないので色が薄く見えるのです。と言うことは、目が詰まっている材料は穴だらけということになって、強度も低いと言うわけです。
杉の柱とケヤキの柱、ある方は比べてみてください。杉の木目は色が濃い一本の線になっているのに対して、ケヤキの木目は細い穴の塊のように見えるのが肉眼でも分かります。
ちなみに、広葉樹は針葉樹よりも植物学的に進化した部類だそうです。
 
余談
針葉樹の葉っぱは針のように細く、広葉樹の葉っぱは手のひらのように平べったい。と、数年前まではそう思っていました。が、なんと、イチョウは平べったい葉っぱを持つにもかかわらず針葉樹なんだそうです。木も人も、見かけだけで判断してはいけませんね。


その11 木の寸法          10月2日

家を建てるときにその家にどんな木を使うかを、『柱は4寸角で・・・。』と言う表現をします。この4寸角はメートル法で言うと約121mmになります。
通常木の寸法を言うときは、挽きたて寸法といって製材した状態の寸法を言います。
これが乾燥によって5%ぐらい縮むと115mmぐらいになります。また、造作材ではカンナで仕上げる時に3〜5mm削るので、やはり115mmぐらいになります。
結果として建物が完成して状態で4寸という寸法は取れてないので、和室などに使う柱は挽きたて寸法を4寸2分(127mm)でとる場合もあります。それでも、削り方によっては120mmより小さく仕上がる場合もあります。
こんな問題も、集成材だと造作用の柱は仕上がった状態でくるので、関係ないわけです。
木造の現場では常識で通っている表現も、知らない人から見ると『それって契約違反じゃない?』と言う事になりかねません。設計監理をする場合は、もちろん設計の段階できちんと説明します。この辺ではありませんが、現場で木の寸法が図面の通りになっていない、というクレームになった話を聞いたことがあるので、こだわる方はちゃんと確認したほうがいいですね。
クレームの中には、施主と施工側の打合せ不足や勘違いが多くあります。私たち設計者の立場でも、出来るだけ分かりやすく説明したり、図面を書いたりしているつもりですが、なかなか100%にはなりません。そんな時どう対応するかというのも、そのクレームが大きな問題になるか、最小限ですむかの違いでもあると思っています。