ネタ切れするまで続く
木曜日は木の話
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2003年9月

その10 強度の比較          9月25日
 
早いもので10回目になりました。
今日は、強度の比較について話してみたいと思います。
材料の強度は、圧縮、引張り、曲げ、せん断、がありますが、同じ体積の鉄やコンクリートと比較すると、コンクリートの引張りが弱いぐらいで、他は木が一番強度が低いです。
なんだ、やっぱり木造は弱いのか・・・、と言うとそれはまた別の話で、同じ重量の材料を比較すると、木の強度は断然優れています。つまり、同じ強度の家を建てるとすると、木造は一番軽い建物になる訳です。軽いと言うことは基礎も小さくてすむので、経済的です。
また、地震の力は建物の重量に比例して大きくかかってくるので、その点では地震の多い日本に適した構造と言えますね。
現在、木造は建築基準法の規制で3階建て、高さも13mまでしか建てられませんが、ちゃんと作れば10階ぐらいは大丈夫だろうと言われています。たとえば羽黒の五重の塔、(高さがすぐ出てきませんが)今までの地震で倒れませんでしたよね。


その9 木の水分、乾燥について          9月18日

今日は木の水分、乾燥についてです。
木の含水率は%で表しますが、これは{木の中の水分の重量÷水分0の状態の木の重量}で計算します。伐ったばかりの木の含水率は、約200%あります。建築用材にとって適切な含水率は、構造材で20%以下、造作材で18%以下といわれています。
木の中の水分は2種類あって、一つは細胞の中に入っている結合水、もう一つは木が吸い上げて中を流れている自由水です。乾燥の初めのうちは自由水がなくなっていきます。自由水が全部なくなった状態の含水率は約30%です。ここまでは木は収縮したり変形したりしません。この後、結合水が無くなっていく時に徐々に縮み始め、反ってきたりヒビが入ったりします。
通常使う状態では自由水はなくなっている状態なので、乾燥や吸湿によって収縮や変形がおきる訳です。
一旦乾燥した材料は、その後水がかかったり水分を吸ったりしても、通気の状態さえ良ければすぐに乾燥しますので問題ありません。その意味では日本の真壁造りや校倉造りは、高温多湿の気候にマッチしていると言えますね。
では、使われている材料は適切な水分まで乾燥しているか?というと、構造材の場合、加工されるときは20%を超えている物がほとんどです。「えーッ、そんなことでいいのー?」かと言うと、私は20%にこだわる必要は無いと思っています。加工の段階から現場での建て方、その後の造作等の現場での作業の間に自然に乾燥していく状態がベターでしょう。
ただし、住宅も“早い、安い、・・・”の昨今、建てるが早いか外も内もふさがってしまうのでは、やはり良くありません。かといって構造材を全て人工乾燥にしてはコストもかかりなす。急激に人工乾燥した構造材は木が死ぬ(粘り気が無くてもろい)と言いますから、良くないですよね。そんな中で、構造用の集成材が住宅にも使われるようになってきたと言えます。
工期を短くすることが、木を良い状態で使うことより優先されているようなことが、残念ながらあったりする訳ですね。
 
余談
シックハウス規制について
今年7月から居室がある全ての建物に換気設備の設置が義務づけられました。新築はもちろんなのですが、部屋を一つ増築した場合でも、今まで20年・30年住んできた既存部分全てに設備をしないといけません。それって何?どういう意味があるわけ?と言っても・・・、そんなことまで法律で決めてしまう日本ってどうかしてますよね。これから先が何だかとっても不安です。


その8 木の強度について          9月11日

今日は外からかかる力に対しての強度についてお話したいと思います。
木材の強度については、国土交通省の告示でそれぞれの樹種について基準強度を決めています。統計をとった数値から5%の安全率をみて決めているようです。しかし木は地域の気候や斜面の方角、周りの環境によって育ち方が全然ちがうので、それによって強度も違ってきます。環境が良すぎて生育が早すぎても目の粗い木になり、強度が落ちてしまします。
設計の段階で構造計算をすればその時にも状況に応じて安全率をみたりしますので、通常の状態で柱や梁が折れるなどという事は心配ご無用ですね。
また、木の種類によっても強度は全然違います。マツ系統は“曲げ”の力に対して強いので、よく梁につかわれている訳です。ただし、この辺には建築用材として出荷できる松は全く無く、ほとんどが輸入材(米マツ等)です。
山の木を使うときは、木を見ることができる生産者、あるいは製材屋さんの力が不可欠です。
この地域でも、小規模ながらも出来るだけ地元の木を出している製材屋さんもいます。庄内の山にある木で建築用材となる物は杉が大部分です。山で木を見てそれを伐採し、葉枯し乾燥・製材後の乾燥・ストック、そして、その木にあった用途になるように挽いていくわけです。それなりの時間と手間がかかります。
そのため国産材は採算が取れない状況になり、高度経済成長のときに林業が極端に衰退しました。
 
余談
杉と言う字の右の3本線はアディダスではなく(ふるッ)、よく整ったと言う意味です。手入れされた杉林を遠くから眺めると木が円錐状にきれいにそろっているのが分かります。とっても美しい景色です(良かったらご案内します)。前述のように性格も整ってますね。同じ3本線の漢字に形がありますが、これは井戸の井に整ったという意味の3本線を加えたもの、外見が整ったという意味の言葉になったようです。


その7 木の強さについて          9月4日

HPの管理人のお許しが出たので、もう少しこの話を続けさせていただきます。木の話なので直接には建物と結びつかない場合もあるかもしれませんが、よろしくお願いします。
今日は木の強さについてです。
強さと言っても色々あります。大きく分けると、力学的に外から受ける力に対しての耐力度の大小、耐不朽性・耐蟻性の大小があります。
力学的に強い木でも、粘りのある木(杉・松)=柱・梁、硬い木(ケヤキ・栗)=土台、軟らかいけど磨耗には強い木(桐)=家具etc・・・、いろんな特徴があります。桐のタンスは軟らかくて断熱性があって、磨耗に強いその特徴を充分に生かしていると言えますね。しかも火にあたると表面が炭化しやすくて、炭化すると木の中まで燃えずに残るので、火事に強いと言われるわけです。この桐を床材に使うと、やわらかいので傷はつきますが、磨耗には強いので耐久性はあるし、断熱性のが高いのであったかで、床暖よりよっぽど気持ちいいですよ。
耐不朽性・耐蟻性では、ヒバ・桧=柱・土台、ケヤキ=土台・柱・梁
針葉樹は木の性質が素直な物が多くて、加工が容易なので構造材や造作材等、何でもござれと言った感じです。広葉樹は硬い物が多く、乾燥しにくく加工もしにくいので、土台や板材・一部造作材、ダボや車知などの二次部材に使われてきました。
杉は非常にバランスがよくて、木の性質も素直で加工がしやすいし、ある程度強度もあり、赤身(芯材)は土台にしても腐れにくく、柱・梁をはじめ何処にでも使いやすい木です。
栂(ツガ)も同じような性質ですが、耐不朽性が小さい木です。ところが、最近使われている土台の多くはこの栂です。そう、薬で処理をするわけです。その薬の効き目はと言うとせいぜい5年もてばいいほうなので、その後はまた業者(ピコ〇さん等)に頼んで処理をしてもらわないといけなくなるわけです。
栗も昔から土台に使われていますが、シロアリにはあまり強くないようなので、古ーいお家では一度注意してみたほうが良いかもしれないですよ。
では、一番長持ちする木は?というと、やはりヒバ・桧でしょうか。宮大工の西岡棟梁が「ケヤキはダメだ、800年しかもたない。やっぱり桧だ、1000年以上はもつ」と言った、ということです。実際、桧づくりの法隆寺金堂は1300年経っているわけですから、確かに1000年以上ですね。