トイレットペーパーに見える顔
                         校長  海藤 三重子
 
1週間前の日曜日、多目的ホールでは、アンサンブルコンテストに
出場するために最後の練習をしています。私は、学校の3階にある
植木に水をやるために、階段を登りました。曲を聞きながら一鉢一鉢に
水をやり、葉をながめ一息入れました。

その後、隣のトイレに入っていきました。個室に入ろうとしたとたん、
びっくりしました。目に飛び込んできたのが、三角にたたまれたトイレット
ペーパーの端です。3階のトイレは、主に高学年が使っています。私は、
たまに利用しているのですが、トイレットペーパーでの心配りを見たのは
初めてのような気がします。なぜか、私を歓迎しているような気がして
きました。私もトイレットペーパーを丁寧に三角に折り、少し戻して
元のように落ち着けました。いいことをした気分になってきました。

5年生・6年生の女子の顔が次々に浮かんできました。誰がしてくれたかは
分かりませんが、トイレットペーパーのかげから、茶目っ気な顔で
「どう、どんな気持ち。ふふふ。」と笑いかけてくるようです。私も思わず
「いい気分だね。心遣いありがとう。」と返事をしています。手を洗いながら、
鏡に映った自分の顔に笑いかけていました。演奏の響く校舎で心が
更に満たされていきました。



ある中学校の男の校長先生が、前任校に行った時、男子中学生に、
「校長先生、僕は、今でもトイレットペーパーの端を三角に折っているよ。」と
声をかけられうれしかった、と話していたのを思い出しました。男の校長先生が、
次に使用する人のための心を指導し、男子中学生がそれをずっと
実行しているのです。校長先生と中学生の心のつながりを強く感じた
ものでした。

また、ホテルや旅館のトイレも、三角にたたまれたトイレットペーパーで
出迎えてくれます。トイレットペーパー一つに、ホテルや旅館の心が
見えます。まさに顧客満足の精神です。

本校の女子は、きっといろんな場面で人の心を重んじながら、心配り・気配りを
してきたのでしょう。何気ないところに気配りができることは素晴らしい
ことです。細やかな心遣いを大切にし、この心を広めていきたいと考えて
います。2学期も終わりとなりました。学習面だけでなく、相手を思いやる
心も育っています。児童会でも挨拶運動を継続中です。年末・年始休業に
入ります。子供たちが楽しく過ごせるよう、地域で育ててくださるよう
お願い致します。